「ワイフとの出会いで人生が変わった」――渡米5年、新婚のピース綾部が語る「結婚」と「夢追う理由」
芸人になる前のこと。高校卒業後、地元・茨城のイス工場で働いていた時、遊びにでかけた東京で『ダウンタウンのごっつええ感じ』のロケ現場に出くわす。憧れの松本人志に「松ちゃん! いつも見てるよ」と話しかけた翌日に、仕事を辞めることを決めた。芸人になる夢を思い出し、後悔のない人生を送ろうと決意したからだ。2017年に多数のレギュラー番組と“自己最高年収”を捨てて渡米した際も、同じ感覚だったという。 「お笑い界を登山に例えるなら、当時は7合目くらいにいて、たまに頂上にいる芸人さんたちに呼ばれて仕事をしてきました。たくさんの先輩方に何かと綾部、綾部と気にかけ、誘っていただきました。大した才能がないのに、才能がある方たちと同じ空間を共有できることこそが僕の才能だった」 「だけど代わりはいくらでもいるし、このまま同じことを続けてもワクワクしない。40歳から60歳までの20年間を人生で一番ハチャメチャしたくて、別の山を登ることにしたんです」 渡米発表の約1年前に相方の又吉直樹が芥川賞を受賞。コンビ間格差に耐えかねたのではという憶測も、ネットには飛び交った。 「嫉妬するどころか、『どんどん又吉先生よ話題になってくれ』と思っていました。実は又吉先生が受賞した翌日、ずっと買おうか迷っていた高級腕時計を買いに行ったんです、自分へのお祝いに。アイツがめでたい賞とったんだからいいでしょって……関係ない僕が人生で一番高い買い物をしました」
軽いノリで夢を追いかけたっていい
この夏にロサンゼルスへの引っ越しを決めたのは「直感」だった。もちろん「ハリウッドのレッドカーペット」も意識してのことだ。 「映画『オーシャンズ11』が大好きなんで、『オーシャンズ20』くらいにコメディアクターとして出演できたらいいですね(笑)」 7月には世界中で配信されるGoogle Pixelの新CMに出演した。オーディションで勝ち取ったまさかの大役だった。夢に向けて日々努力を重ねているのだろう。そう問うと、彼はあっさりと否定する。 「死に物狂いでハリウッドを目指しているかというと、まったくそういうことはなくて。かといってアグラをかいているわけでもないんですけど」 「別に軽いノリで夢を追いかけたっていいでしょ?って思うわけです。ノリは軽くたって、どれだけ自分を信じて突き進めるかが大切。詳しくは知らないですけど、あのライト兄弟も『鳥みたいに飛べたらいいなー』っていうノリから入ってそれを強く信じて貫いたから、飛行機を作れたのだと思う。誰よりも僕が、僕の一番のファンとして、僕の物語にワクワクしていたいんです」 高い自己肯定感を育んでくれたのは母だった。小学生の頃「吉本に入って芸人になる」という夢を教師に「できるわけない」と否定された時、「子どもの可能性をつぶすようなことを言っていいのか」と学校に電話で猛抗議してくれた。 「しかしどうしてみんな、頂上に到達することばかり注目するんだろうね」と綾部は首をかしげる。 「登山の途中でおいしい湧き水や神秘的な洞窟に感動することもあれば、熊に襲われかけて震えることもあるでしょ? そんな途中の風景を、ただただ楽しんだっていいと思うんです。たとえ5合目で下山しても景色を見た経験はなくならない」 「もうそれだけで山に登ってよかったと思えるような素敵な出会いだってある」 彼にとってはそれが、「ワイフ」との出会いだったという。ニューヨークで知り合った英会話講師の日本人女性と、今年結婚した。 「ワイフとの出会いがすべてを変えました。英語をほとんどしゃべれなかった俺が、『日本の英語教育を変えていきたい』と志を抱くようになったほどに」