50代「ハラスメント」を恐れて何も話せなくなった男性の切実な本音…職場で会話ができない自分は「ダメな人間」とおもってしまうんです
つい自己否定してしまう
社内の飲み会も減りました。急に誘うのはパワハラ。誘うならみんなを平等に誘わないと、あとでなんと言われるかわかりません。人と親しくなる機会がどんどんなくなってきていて、ハラスメントと言われる機会は増えてきている。自分はいったい、どんな立ち位置で、誰と、どう話していいのか。わからなくなってきてるんです。 プライベートでは、昔からの友達とたまに会えば、話せますけどね。でもめったに会うこともないです。 家族はいます。3歳年下の妻と、高校2年生の娘と3人暮らしです。家族とはもちろん、普通に話せますよ。娘には「お義父さん、親父ギャグウザい」と言われながらも、仲良くしています。でも、学校関係者とは何をどう話していいかわからなくて、妻にまかせっきりです。 こんな日々ですから、次第に性格が暗くなってきた気がします。普通のコミュニケーションに悩む自分が嫌で嫌で、「ダメな人間なのかも」と自己否定をしてしまいます。最近は、鬱々と眠れない日が多くて、眠ってもまた起きて……という感じです。 おそらく、こんな僕の悩みは「たいした悩みじゃない」と思われますよね。だけど本当につらいのです。人と「普通に話したい」。なのに「それがかなわない」。どうすればいいのかがわからない……。 子どものころは、学校でドリフターズの真似をして受けるような明るい人間だったんですけれどね。あの頃みたいにとは言いませんが、フランクに人と話して笑えるようになれたらと思うんです。
安藤さんの答え
たしかに、時代が変わりましたよね。昔はごく普通に言えたことが、今ではNGのことがふえました。正直、私も「今のほうがいい」と思う面もありますが、「窮屈だなあ」と昭和を懐かしむこともありますよ。 私の世代は、セクハラを当たり前に受けてきた世代です。昔はもちろんですが、ほんの数年前まで、セクハラはけっこう普通にありました。どの業界も、トップや決定権のある人は、みんな私より年上の男性。けっこう「いいお年頃」の私にでも、セクハラの手は伸びてきていたのです。 でもやっぱり、新卒で会社員になったころは、時代がまだ成熟していなかったこともあり、セクハラは超多かったです。 たとえば、私が新卒で会社員になったときのことです、 2年目に所属した部の上司は、平気でコチラにタッチしてくる男性でした。会社の自分の席にいると、すぐ近くにやってきて、肩を軽くたたいたり、揉んできたり。椅子に座って対面で話していると、私の膝をポンポンしてくる。 すごく嫌でした。でも当時は、その手を払いのける勇気もなかったし、おそらくはらいのけても、誰も上司を咎めなかったと思います。むしろ、私が社内で居心地が悪くなったと思います。 …そんな状況が「嫌で嫌でしょうがなかった」と話す一方、人間の機微を知る学びにもつながったと言う安藤さん。つづく後編記事の<50代、ハラスメントが怖くて「なにも話せなくなった」男性の絶望…この状況を好転するための「2つの秘策」>では、その経験を踏まえて上手にTPOに合わせて上手にコミュニケーションをとるコツを具体的に紹介します。
安藤 房子(作家・恋愛心理研究所所長)