50代「ハラスメント」を恐れて何も話せなくなった男性の切実な本音…職場で会話ができない自分は「ダメな人間」とおもってしまうんです
時代を経て変わった「ハラスメント」
世間をとりまく「ハラスメント」の事情が変化をとげている。日本においては1980年代ごろに「セクシャル・ハラスメント」が問題化されたことをきっかけに、一般にも浸透しはじめ、平成元年には職場でのセクハラを争った裁判で原告側が全面勝訴、同年には「セクハラ」が流行語大賞にもなった。 【マンガ】5200万円を相続した家族が青ざめた…税務署からの突然の“お知らせ” 2000年に入ると、職場での上司や先輩など、地位上位者からのいじめや嫌がらせに対する「パワー・ハラスメント」、また、結婚や出産などに対して、デリカシーに欠ける発言には「マタニティー・ハラスメント」などが社会問題化される。 現在は「アルハラ」「モラハラ」「カスハラ」「オワハラ」「スメハラ」「シルハラ」…など、ハラスメントに該当する状況はどんどん細分化しつつあるようだ。 こうした背景受け、政府は2020年にパワハラ防止法を制定し、パワーハラスメント対策が事業主の義務と位置づけ、セクシュアルハラスメント等の防止対策も強化。制定直後はハラスメントの認識がない企業や一部従業員による発言が問題となり、SNSなどでも炎上したが、現在は企業もさまざまな対策を行いハラスメント防止に努めている。 ハラスメント問題で難しいのは、本人は「よかれ」と思った発言でも受けた側のとらえ方によって、大きく差が出るところだ。そもそもグレーゾーンが多い人間関係のなかで線引きがあいまいになる。 そのため、対策側としても「どこまでがOK」で「どこからがNG」かという基準値がなかなか設けられず、また設けられてもすべてが感覚的に完璧に受け入れることは難しい。今回、恋愛カウンセラーの安藤さんのもとに訪れた、大手印刷会社に勤務する太一さん(仮名)さんもその基準値が分からず、深い悩みに陥ったひとりだ。
50代、ハラスメントを恐れ言葉が出ない男性
【相談内容】何を話してもパワハラ、セクハラと言われる時代。会社の部下たちや地域の人たちと、何をどう話せばわかりません。昔はドリフターズの真似をする明るい子供だったのですが、今は陰気くさいおじさんになってしまいました。(太一/50歳・印刷会社勤務) ジミ目の会社のジミな僕。会社の部下たちと何をどう話していいかわからなくて、コミュニケーションがとれません。昔は、ごく普通に社内の人とも、取引先とも話せたんです。たぶん一般的な会話はできていたと思います。 それに、印刷会社って一応出版業界や広告業界とつながっているじゃないですか? かつてはマスコミ関係の華やかなパーティーが盛んでしたしね。一応、大手の印刷会社なので、よく誘われては飲みに行き、名刺交換をしていましたよ。 でもそれって20年くらい前の話です。ここ10年くらいはどんどんマスコミ業界も景気のいい話はなくなってきましたし、華やかなパーティーも激減。コロナ以降はさらにです。最近では、またチラホラ会合があるようですが、かつてのように大きなホールを借り切って500人とか集まるようなパーティーはなくなりました。 現実問題として、前は普通にあった「話す場所」がなくなってきたことも、なにを話していいかわからなくなった原因かもしれません。それに加えて、最近は昔みたいなギャグはうけないし、何を話してもパワハラとかセクハラと言われてしまう。 たとえば、30歳くらいの女子社員。かつてなら「恋人とかいるの?」「結婚とかどう考えてるの?」という問いかけから会話がはずんで、公私ともにいろいろ相談にのってあげられる上司になれたと思うんです。でも今は質問自体がNGですよね。コンプライアンスを気にして触らぬ神にたたりなしってことで、何も話さないほうが無難かなとも思ってしまいますよね。