伊藤比呂美「母とは一生わかり合えないと思って生きてきた。寝たきりで認知症が進んだ母の介護で訪れた変化」
伊藤 愛情深くリベラルな母親が、最良の存在とは限らないのですね。母親と何かしら葛藤を抱えている人には、どのようなアドバイスをなさるんですか。 海原 ケースバイケースですが、なるべく親元から離れ、物理的距離をとってもらうようにします。私自身、親元から物理的に離れられない子どもの頃は、冷静に関係を分析することで精神的な独立をはかり、葛藤から逃れられた経験があるので、そういった選択肢をお伝えします。 伊藤 いわば精神的な《母親殺し》ですよね。子の成長に必要な親離れと子離れができるかどうか。 急に実行するのは難しいから、「この人から離れたほうがいい」と気づいたら、ちょこちょこ細かく反抗したほうがいいと思う。自分が嫌なことや納得できないことには、その場ですぐ「ノー、ノー、ノー」と言い続けるしかないですね。 海原 おっしゃる通り。つらい関係から逃れるためにも、自分らしさの確立と成長のためにも、自我をアピールする方法を身につけていくといいですね。 伊藤さんのように、自ら母娘の間にある壁の違和感に気づいて、壁を壊して前に進む人もいる。そういう体験談などを目にすると、救われたと感じる人もきっと多いんじゃないかしら。 伊藤 ありがたいです。そう言ってもらうと、私も救われる。 海原 私も自分と母の関係を振り返って、「謎は謎で未解決でもいい。無理して予定調和にしなくていい」とあらためて思いました。 解決しないことや許せないことを抱えて悩んでいる人もいると思うので、そんなことをお伝えできたならいいなと。今日は、濃いお話ができて本当に楽しかった。 伊藤 一人っ娘同士、もっといろんなことを語り合いたいなあ。ぜひまたお会いしましょう。 (構成=山田真理、撮影=村山玄子(伊藤比呂美さん),大河内 禎(海原純子さん))
伊藤比呂美,海原純子
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