「災害はまだ終わっていない」 今なお続く台風被災地の苦境 求められる息の長い支援
災害救援・復興支援に取り組む名古屋市の認定NPO法人「レスキューストックヤード(RSY)」が12月19日、同市中区の市民活動推進センターで台風19号の被災地支援活動報告会を開いた。千曲川が決壊、大規模な浸水被害が発生した長野市では、家屋の片付けなどは進んでいるものの、心のケアを含めたボランティアのニーズはまだ高く、「現地で被災者の話を聞くだけでもいい」などと呼び掛けられた。
緊急対応から生活再建の支援へ
10月にボランティアとして長野市の豊野地区に入った橋本和彦さんは「活動初日は廃材や土のうがいたるところで山積み。復旧できるのかと不安を感じた」と語った。一階の天井まで水に浸かった建物も多く、雨の日には地面がぬかるみ、晴れれば乾燥した泥が砂ぼこりとなって舞う過酷な環境の中、多くのボランティアが泥出しや清掃をした。そのかいあって11月上旬には豊野地区の多くの家屋で片付けを終えられたという。 豊野地区の自治会と協力して炊き出しも実施。断水状態の中、キッチンカーで温かい食事を提供し、食事を取りに来ることが困難な世帯には配達もした。常務理事の浦野愛さんは「車がないなどの理由で炊き出しや避難所まで来られない人たちには援助物資も届かない」と説明。聞き取り調査も行い、取り残されがちな在宅避難者への支援の必要性を行政に強く訴えた。 その後、炊き出し会場は「まちの縁側ぬくぬく食堂」という地域住民が集まる拠点となり、食事の提供や情報提供などを行っている。「来れば相談ができる、みんなと会える場が必要」(浦野さん)。本格的に生活を再建していくための支援や、助け合える地域のコミュニティーづくりが引き続き課題となっている。
今なお高いボランティアのニーズ
会場からは「困難な状況にある被災地で、私たち一般市民にもできることはあるか」という質問が出された。代表理事の栗田暢之さんは「被災した経験を語り、他地域での防災に生かしてほしいという人もすでに出てきている。現地に行って話を聞くだけでもいい」と回答。依然としてボランティアのニーズが高いことを訴えた。 2019年は大雨や大型台風による被害が全国各地で相次ぎ、泥出しが終わらないまま年を越しそうな地域もある。特に宮城県丸森町、福島県いわき市、そして長野市では現在も多くのボランティアを必要としている。また、被災者への義援金や、現地で活動する団体などへの支援金も足りていないという。 「本格的な冬が到来し、被災者の心身の健康状態がますます懸念される。住環境の確保、利用できる制度の丁寧な説明、りんご農家などの生業支援など、多方面からの息の長い支援が必要だ」(栗田さん)。 災害の多い日本においては誰もが「明日は我が身」。被災地への寄付やボランティア、あるいは自身の防災への備えを見直すなど、私たち一人ひとりが出来ることを考え実行し続けていくことの重要性を感じる報告会となった。 (石黒好美/nameken)