《「iDeCo」の未来はバラ色?》ドイツの確定拠出年金も「自己責任」型へ、安全志向の国民はついていけるか
■ ドイツでは導入10年ほどで契約数が停滞 受給開始は公的年金と同じタイミング(1964年以降生まれは67歳時)で、原則途中引き出しは不可。拠出時と運用時は非課税で、給付時に課税される。年金、貯蓄、投資信託、住宅の4種類があり、加入者は収入や家族構成などに応じた拠出金を負担する。低所得層には補助金を手厚くし、高所得層は支出控除を多く受けられるようになっている。 制度導入から10年ほどは順調に契約数を伸ばしたが、その後は息切れ状態が続いている。現状、加入者は対象者の3人に1人程度。補助金の体系が複雑だったことに加え、終身給付が前提のため受給額が低く抑えられており、さらに長引く低金利で運用実績が低迷したこともあって制度自体の魅力が薄れていた。 筆者のドイツ在住の知人は「老後に向けて積み立て感覚で利用している人が多いのでは?」と推測しつつ、「補助金や支出控除のメリットはあまり感じられず、低所得層、高所得層どちらからも支持を得ているとは言い難い状況」と切り捨てる。 加入者の伸び悩みに直面するドイツの現政権は昨年、関係省庁や業界関係者、専門家らを集めて私的年金に関する検討を行った。その中で出てきたリースター年金の改革案は、補助金体系の見直しや自営業者への適用拡大に加え、終身給付をマストとせず、投資元本も100%を保証しなくてもいい(保証率ゼロも可)というものだった。 ■ 日本のiDeCoは「運用による年金上乗せ」色が強い 公的年金の補完という役割から、公的年金と同じ終身年金を基本とし、元本を損なわない設計にしてきたが、それを放棄して「運用による年金への上乗せ」に転換した格好だ。 振り返って日本のiDeCoを見ると、不人気に悩むドイツのリースター年金とは異なる設計になっている。 受け取り方は一時金、年金、両方の組み合わせが可能で、受け取る期間や年に何回受け取るかも選べるなど自由度が高い。その半面、基本は積立資産の取り崩しであり、原則、給付は有限になっている(終身受け取りが可能な金融機関もある)。 また、元本確保型の商品も用意されているが、投資商品に関して元本は保証されていない。ドイツに比べると、もともとが「運用による年金への上乗せ」色の強い制度だったと言える。