《「iDeCo」の未来はバラ色?》ドイツの確定拠出年金も「自己責任」型へ、安全志向の国民はついていけるか
■ 米国から聞こえてくる「景気のいい」話 日本の企業年金で確定給付から確定拠出へのシフトが進んだように、低金利が続く中で確定給付や終身給付を維持していくのは容易ではない。ドイツでは低所得層を基礎年金でケアしながら、中間層以上に制度の普及を図っていく考えだという。 制度の見直しを迫られたドイツに対し、先に見たように、日本ではiDeCoの加入者数が好調に推移している。それは日本の確定拠出年金は米国を範にしたからだろう。 たしかに確定拠出年金の本家・米国から伝わってくるのは景気のいい話ばかりだ。 米国の株高により、投信大手フィデリティでは残高100万ドル以上の401k口座の数が過去最高水準に達しているという。米国では個人年金の販売額が2022年、2023年と2年連続で過去最高を記録した。その要因として、こうした「401k長者」が積立金を個人年金に振り向けていることが指摘されている。 こういう話を聞かされるとつい、確定拠出年金によるバラ色の老後を思い描いてしまいがちだ。気を付けたいのは、米国そして日本が採用している「運用による年金への上乗せ」制度にはもれなく自己責任がセットされていることだ。 ■ この先の投資環境も同じとは限らないが… 確定拠出年金がスタートした頃から比べると日本でも「オルカン(国内・海外先進国・新興国など全世界の株式を投資対象とするインデックスファンド)」に代表されるように使い勝手のいい投資商品が充実してきた。短期的な浮き沈みはあるものの世界的な株高トレンドに乗ってパフォーマンスは好調に推移してきた。 だが、この先20年間の投資環境が過去20年間を上回るという保証はない。むしろ、冷戦後の国際協調体制が崩壊して各地で保護主義が台頭し、紛争が勃発している今の方が、これまで以上に先行き不透明感が強いように思える。
■ 株価乱高下で動揺する新規参入者も ある証券関係者はこう話す。「このところ相場が乱高下する中、NISAも含めたコロナ以降の新規参入者ではSNSを中心に動揺の声が広がり、『長く持っていれば上がるんですよね?』といった問い合わせも入るようになった。新規参入者の投資先はほぼ横並びで、自分の意思で選んでいるのかもよく分からず、正直、この先大丈夫なのかと心配になる」 世界一の投資大国・米国を範にした確定拠出年金では、より本家に近い「運用による年金への上乗せ」スタイルの日本は今のところうまくいっているように見え、国民性に合わせて社会保障的な色彩を濃くしたドイツは見直しを迫られている。 とはいうものの、制度が国の経済環境や国民にフィットしているのかは一概に判断できない面もある。日本人とドイツ人に共通するのが、貯蓄率の高さ、そして投資に積極的ではないことだ。勤勉で安定志向と言われる両国の国民性の影響が大きいのかもしれない。 10年後、20年後にiDeCoやNISA、リースター年金がどうなっているのか。加入者は、投資も制度も、長い目で見守っていく必要がありそうだ。
森田 聡子