「不安7割・希望3割」7月豪雨被災地“酒田”が迎えた冬…被害を受けた自宅・農地“先が全く見えない”のは変わらず【山形発】
2024年も山形県内では、さまざまな出来事があった。「ことし報じたニュースの今」をシリーズでお伝えする。7月豪雨で大きな被害があった山形・酒田市は、災害から約5カ月を経て、小さな希望と大きな不安の中、厳しい冬を迎えている。 【画像】住宅や農地に今も残る爪痕
「地域交流会」でコミュニティを維持
12月8日、7月の大雨以降はじめて酒田市・大沢コミュニティセンターで「地域交流会」が開かれた。集まった住民みんなで特製のカレーを食べ、久しぶりのにぎやかさに笑顔があふれていた。 「前はみんなでこうやって集まったりした。今回、楽しく顔を合わせました」と話す住民に、「大雨の後はなかなかこういうイベントはないかなと思っていたので、久しぶりにわいわい、大沢がまた活気づいていくような気がしてうれしい」と話す住民もいた。 そのほか、地域の子どもたちによる太鼓の演奏や、復興を進める様子を記録したVTRの上演なども行われた。この交流会の主催者の1人で住民の阿部彩人さんは「被害が大きくて引っ越さざるを得ない人も多くいる中、みんなで集まって笑顔になれる瞬間は必要だと感じていた。住民が1つになれるイベントになれば良い」と、災害を受けて希薄になった「地域コミュニティの維持」も会の狙いの1つだと話す。
5カ月たつも自宅の修繕進まず
2024年7月の大雨で甚大な被害があった酒田市。当時86歳の女性1人が亡くなり、住宅の被害認定は全壊13棟を含む793棟。道路や河川などの被害は82カ所、総額で56億円を超えている。これを受け酒田市は11月、向こう5年間にわたる「復旧・復興方針案」を作成し、2025年1月の本策定を目指して、現在、住民との意見交換をしている。 酒田市の矢口明子市長は11月29日の会見で「被災者が被災前の当たり前の生活を取り戻すと共に、単に被災前の状態に復旧することに留まることなく、市民が今後も住み続けたいと思える街を目指して復興に取り組む必要がある」と述べた。 被害が大きい地域の1つ、酒田市下青沢に住む農業・相蘇弥さんは、12月に入ってもまだ家の後片付けをしていた。相蘇さんは「大工さんまだ入っていない。とりあえず自分でやれる所、目についた所だけ」と話す。 相蘇さんの自宅は、そばを流れる荒瀬川がはん濫して1階部分が水に浸かり、大きな被害があった。敷地内にあった小屋も流され、農機具のほとんどが使い物にならなくなった。当時、相蘇さんは「自宅を直して住んでいきたいが、どこまで直せるか全然わからない。地道にやるしかない」と話していた。 あの日から、まもなく5カ月。同居していた両親を市営住宅に仮住まいさせ、用心を兼ね、自宅の2階に1人で住んでいるが、修繕は進んでいない。「山小屋にいる感じ。少しは落ち着いたかなと思うが、先が全く見えないのは変わっていない」と相蘇さんは話す。