「6人のバスケ部」まさかのピンチ…5人で高校“最後の冬”全国大会へ【バンキシャ!】
この事態が、逆にチームに転機をもたらした。 仲間たちが突然、食堂のテーブルを並べ替え始めた。練習時間以外でも、アブバカくんと過ごす時間を増やそうと考えたのだ。 “1日でも長く6人でバスケを” その思いが日を追うごとに強くなる。食事を終えたアブバカくんが仲間に頼んだのは、髪の毛のカット。 アブバカ選手 「いつも通り、そうそうそう」 入学以来、髪の毛はいつもチームメートの紺野くんが切ってくれていた。 紺野 翔太選手 「こんな感じ?」 アブバカ選手 「ナイス、ナイスナイスナイス。いい感じ」 チームの絆が深まると、いつしかパス回しまでスムーズになっていた。 キャプテン 二宮 有志選手 「今はみんな優勝に向かって、しっかり全員同じ方向を向いている」 この6人でしか、できないバスケ。ようやく、南陵のプレーが戻ってきた。 ◇◇◇ 迎えた和歌山県高等学校バスケットボール秋季選手権大会。南陵は、順調にコマを進め、決勝の舞台に勝ち上がってきた。 決勝のカードは、2年連続の相手となる強豪チーム(初芝橋本)。白のユニホームが南陵。アブバカくんは先発で出場する。軽快なパス回しから、アブバカくんが先制点を決めた。 チームワークを取り戻した南陵は、その後も攻守で圧倒。見事、4年連続4回目の優勝を決め、全国大会への出場権を獲得した。 バンキシャ 「無事、優勝したね」 アブバカ選手 「結構うれしいです。やっと勝ちました」 この直後、両親との約束通り、帰国の途に着いたアブバカくん。
“全国大会も6人で戦いたい” アブバカくんは両親を説得して戻ってくると、仲間たちに告げた。 アブバカくん 「最後まで(一緒に)やりたいから家族と話すのを頑張る。ちゃんと戻れるように」 「待っているよ、行ってらっしゃい」 2週間後──。アブバカ君の髪の毛を切っていた、紺野くんにメッセージが届いた。 「もう一度みんなと一緒にプレーすることはできなくなった。僕にとってはつらい決断だ。でもほかに選択肢はなかった」 アブバカくんは進学準備を優先させたい両親を説得できなかった。