市場縮小が止まらないバイク市場、メーカーが見据える未来とは
“バイクの再定義”はコミュニティの移動手段を変えるか
そして今回、この東京モーターショーのヤマハブースでは気になるコンセプトモデルがあと2つありました。それが立ち乗り超小型モビリティの「トリタウン」と自動運転バイクの「モトロイド」です。 「トリタウン」は、前輪2輪構造のLMWテクノロジーを採用しており、エンジンは電動。ライダーは立ち乗りで利用し、ライダー自身のバランスコントロールによって姿勢制御を行います。見た目は3輪のセグウェイやキックボードといった印象。「ラストワンマイルの移動を楽しくする」というコンセプトで開発されているそうで、自転車に代わる近距離の移動手段として、また工場や空港といった広い施設やイベントスペースの屋内移動の手段として活用できるのではないでしょうか。 そして自動運転バイク「モトロイド」は「人とマシンが共響(きょうめい)するパーソナルモビリティを目指す」というコンセプトで企画された検証実験機で、バイクに搭載された人工知能がオーナー=パートナーを認識し、パートナーのジェスチャーに応じてパートナーの元へ自動運転で近づいて行ったり、また歩いていくパートナーの後をついて行ったりといったデモンストレーションが披露されていました。「自動車メーカーさんの自動運転とは異なり、人とマシンのコミュニケーションを重視したアプローチです」(辻井さん)。
この二つのコンセプトモデルから見えてくるものは、スマートコミュニティビークルの可能性です。近い将来、世界的に国内人口は都市圏に集中すると言われており、そこでは交通渋滞や排ガス問題、域内自動車台数の増加による駐車場の用地確保など移動手段をめぐる課題が深刻になると懸念されています。 そこで、近年議論されているのは新たな公共交通システムやカーシェアリングといった移動手段の仕組みを整備することで、自動車の保有台数を減らすというもの。人工知能や自動運転などを活用したスマートコミュニティビークルはこうした未来のモビリティを占う重要な研究分野のひとつです。 自動車業界では、すでに2人乗りの小型自動車や自動運転自動車により新たな交通システムやスマートコミュニティビークルの構想などが前回の東京モーターショーで発表されていますが、より小型でパーソナルな移動手段であるバイクも、未来のスマートコミュニティビークルの担い手となるポテンシャルは十分にあると言えるのではないでしょうか。 この点について辻井さんは「ヤマハは転倒リスクを軽減できるLMWテクノロジーと自動運転技術を両方開発しているので、こうした技術を活かして自分で操縦できない人のサポートや閉鎖的な空間での移動手段として活用できるパーソナルパブリックモビリティ(誰でも気軽に乗り合い利用できる移動手段)の研究開発も進めています。バイクは自動車に比べて使うスペースがコンパクトといいというのが利点。その利を活かし、利用環境の整備のために研究を推進したいと考えています」と語っています。