市場縮小が止まらないバイク市場、メーカーが見据える未来とは
確かに、警察庁がまとめた統計でも、全国の交通事故全体に占める二輪車が絡む死亡事故率は自動車や自転車と比べて約2倍と高く、こうしたデータがバイク=リスクが高いというイメージを増加させているのかもしれません。
バイクそのものを再定義することで、不安感払拭を目指す
では、こうした市場縮小を食い止めるためにバイクメーカーはどのような努力をしているのでしょうか。 辻井さんは「どのメーカーもタイヤのロックを避けるABS(アンチロックブレーキシステム)やコンビブレーキ(前後輪で連動してブレーキが利く仕組み)などの安全装置の開発・搭載を推進しています。転倒リスクをいかに軽減できるかに注力している状況です。ヤマハでも、LMWテクノロジーという前輪を2輪化して転倒リスクを軽減する新たなバイクの形を提案しています」と語ります。 辻井さんによると普通のバイクは前後1輪ずつでバランスをとって走行しますが、LMWテクノロジーを搭載したバイクは前輪2輪、後輪1輪の計3輪になります。簡単に言うと2輪車が3輪車になることで走行時のバランスが取りやすくなるというのです。「この技術によって、操縦安定性の向上や走行時の視野の拡がりを実現します。現在『トリシティ』シリーズで2車種を商品化していますが、今後は新たにスポーツタイプを市販化する予定です。また大型バイク、スポーツバイクから立ち乗りの超小型モビリティまで幅広く研究開発しています」(辻井さん)。 つまり、バイクの不安感に繋がる要因がそもそも2輪でバランスを取るという運転の難しさであるのならば、その形そのものを再定義しようという発想です。「体験してもらった人の声は良好です。乗ってみたら安定感や運転しやすさが全く違った、普通のバイクのように扱えて軽快感はそのままだという声が寄せられています。しかしまだ認知が十分に進んでいないので、LMWテクノロジーの体験機会の創出などを通じてバイクの楽しさをもう一度体感していただきたいですね」(辻井さん)。