「トランプ2.0」早くも本性を現した「自国優先」…関税攻勢とパナマ・グリーンランドへの中国進出「断固阻止」でもくろむ「覇権堅持」
パナマ、米国の覇権堅持の一環か
トランプ氏はトルドー加首相との会談で、高い関税で疲弊するなら「米国の51番目の州になるべき」と発言したとされ、話題になった。概してジョークと受け止められているが、その真意は不明だ。 トランプ氏の視線は、パナマ運河やグリーランドにも向けられた。トランプ氏の次男エリック氏は2024年12月23日(現地時間)にX(旧ツイッター)にて、トランプ氏がカナダ、グリーンランド、パナマ運河、を米通販大手アマゾンでショッピングカートに追加しているような画像を投稿したことでも、話題になった。 ■図表3 カナダ、グリーンランド、パナマ運河に食指を伸ばすトランプ氏 パナマ運河をめぐって、トランプ氏は2024年12月22日、アリゾナ州で自身を支持する保守系団体の集会で演説するなかで「パナマが請求している(通航)料金は馬鹿げており、極めて不公平だ」と批判した上で、「パナマ運河を全て、速やかに、問答無用で返還するよう、我々は要求するだろう」と明言し。その前日には、自身が運営するSNSで「重要な国家資産」と投稿し、領有権を主張する準備も怠らなかった。 太平洋と大西洋をつなぐパナマ運河の歴史を振り返ると、当時周辺地域を支配していたフランスが1881年に建設に着手したものの工学上の問題と死亡者増加を受け1889年に建設停止していたところ、セオドア・ルーズベルト政権下の1904年に引き継ぎ1914年に開通させた。それから約70年を経て、1977年に当時のカーター米大統領とパナマのトリホス将軍が合意した条約に基づき、1999年末にパナマへ1ドルで返還されたという。 2021年時点のパナマ運河の国別の利用シェア(貨物量ベース)は米国がトップで72.5%を占め、次いで中国が22.1%、日本が14.7%を占める。トランプ氏が高過ぎると不満を漏らす通航料金は船舶の大きさや目的によって異なり、最低0.50ドルから最高30万ドルと幅広いレンジとなっている。 ■図表4 2021年時点のパナマ運河の国別利用シェア(貨物量ベース) トランプ氏は今回、通航料金だけでなく「国家安全保障上の問題」を挙げた。その理由は、利用シェア2位の中国にある。 中国はトランプ第1次政権前から、虎視眈々とパナマに接近していた。CSISによれば、2016年に中国に拠点を置くランドブリッジ・グループが9億ドルの契約でパナマの最大の港である大西洋側のマルガリータ島を取得。この契約により、パナマ・コロン・コンテナポート(PCCP)がメガシップ用の深水港として設立され、その建設と拡張は中国交通建設公司(CCCC)と中国港湾工学公司(CHEC)によって行われたという。 さらに、2017年にパナマは台湾と国境を断絶する一方で中国と国交を樹立。2018年には、CCCCとCHECが率いる中国のコンソーシアムが、パナマ運河の第四橋のための14億ドルの契約を獲得しました。そして同年12月には、パナマを訪問した習近平主席とバレーラ大統領(当時)との会談にて、ラテンアメリカ諸国で初めて一帯一路構想(BRI)への支持を表明するに至る。これが中国のパナマ運河における影響力を決定づけ、中国はエネルギー関連施設、水資源の管理、会議場など幅広くパナマに投資する状況だ。