「トランプ2.0」早くも本性を現した「自国優先」…関税攻勢とパナマ・グリーンランドへの中国進出「断固阻止」でもくろむ「覇権堅持」
「関税は辞書の中で最も美しい言葉、我が国を豊かに」
トランプ氏はかつて「タリフ・マン(関税男)」と自称し、米大統領選で勝利後初めて2024年12月16日に行った記者会見では、「私にとって関税は辞書の中で最も美しい言葉であり、我が国を豊かにする」と明言した。 米大統領選の最中、政権移行チームの共同委員長を務め、商務長官に指名されたハワード・ラトニック氏は、メディアに対し関税は「あくまで交渉材料」と説明。財務長官に指名されたスコット・ベッセント氏も、1)米国が貿易不均衡から立ち上がる手段、2)大統領の外交政策目標を達成するための手段、3)歳入増の手段――と明言していた。 確かに、カナダやメキシコ、中国に対しては違法薬物や不法移民流入、犯罪の抑止、そしてBRICS諸国に対してはドル離れを阻止する上でのカードとして切られたと言えよう。欧州に対しては、対EUへの貿易赤字縮小の狙いがあるのは明白だ。 一方で、トランプ氏は1897年に第25代米大統領に就任したウィリアム・マッキンリー氏を称賛する。マッキンリー氏といえば、関税を活用し保護主義的政策を講じ、不況からの脱却を図ったとされる。同時に、米西戦争でフィリピンを獲得、戦争中にハワイ併合に踏み切った。また、中国進出に出遅れるなか、日清戦争に勝利した日本、ロシア、英独仏伊など列強に対し、当時のジョン・ヘイ国務長官が「門戸開放・機会均等」を提唱、中国進出の糸口をつかんだ。 トランプ氏の政策といえば、1823年に第5代大統領のジェームズ・モンロー氏が打ち出した「孤立主義=モンロー主義」と関係が深い。 1期目には米軍撤退論を唱え、実際にドイツやアフガニスタン、イラクなどで駐留米軍の削減を進めた。米大統領選に勝利後、北朝鮮担当特別任務大使に指名したリチャード・グレネル元駐独大使も米軍撤退について言及していたことが思い出される。 また、1期目の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の不参加決定のほか、トランプ第2次政権発足初日に世界保健機関(WHO)から脱退する可能性も取り沙汰されている。 もうひとつ、トランプ氏の対中国への姿勢も、モンロー主義的な色彩を帯びる。当時、南北アメリカ大陸の権益確保を狙う上で、モンロー主義は欧州からの干渉を防ぐ目的もあったわけだが、足元では中国の中南米・南米への進出が目覚ましい。だからこそ、トランプ氏はまず違法薬物流入防止を名目に、追加関税という牽制球を投げたかのようだ。 しかし、関税の手法をその目的を踏まえれば、モンロー主義一色とは言い難い。特に中国の台頭阻止を念頭に入れながら、トランプ2.0はマッキンリー的帝国主義を復活させつつあるかのようだ。