ブルペン捕手から夢を…日本人初メジャーコーチ「独占公開!3つのワールドシリーズ制覇リング」写真
大谷翔平がアジア人初となる本塁打王と2度目のMVPとなった今年のメジャーリーグにもう一人、特筆すべき日本人がいる。日本人初の常勤コーチを務め、3つのワールドシリーズ・チャンピオンリングを持つサンフランシスコ・ジャイアンツの植松泰良氏(40)だ。裏方のブルペン捕手からメジャーコーチへと階段を駆け上がった植松氏自身が振り返る半生を、【前編:「高校でも補欠の男」米国で壮絶苦闘】に続き紹介したい――。 独占公開!…日本人初メジャーコーチは3つ所有「ワールドシリーズ制覇」秘蔵リング写真 ブルペン捕手として’08年に念願のメジャーリーグの仕事をつかんだ植松氏。憧れのフィールドでの仕事は感動の毎日だった。 「メジャーは子供のころから描いていた景色ですから、嬉しさでいっぱいです。ナイトゲームがある日なら昼前に球場入りし自分のトレーニングを終えてからブルペン入りして投手の球を受ける。それ以外にも選手たちにいつでも利用してもらえるよう、キャッチボール、遠投の相手、打撃投手、トレーナーの手伝いなどいろいろやりました」 充実した毎日を過ごしていた植松氏だが、同じ仕事が長年続くと次第に心境の変化が生じてきた。これから自分がどうキャリアを積んでいけばよいのか分からなくなってしまったのだ。 ◆「ブルペン捕手のままでいいのか」 「このままずっと裏方のブルペン捕手のままでいいのか考えました。とはいえ、選手として実績のない自分にどういう道があるのかも分からない。そんなとき、当時のアシスタントコーチが自分にコーチの仕事をいろいろと振ってくれたのです。 おかげで仕事を覚えることができ、自分にもコーチができるんじゃないかと思えるようになりました。新たな目標ができ、コーチとしてやれると実感できるようになった数年後、ゲーブ・キャプラー監督(当時)に『自分はチームに貢献できるからコーチをやらせてほしい』と伝えにいきました」 マイナーで長年コーチを務めても、メジャーのコーチになれない人はたくさんいる。だが、植松氏の普段の真面目な働きぶりはチーム内でも高く評価されていた。監督と数回の話し合いの後、’22年からアシスタントコーチに昇格することが決まる。岩隈久志など、かつてメジャーで活躍した選手が非常勤でコーチを引き受けるケースはあるが、常勤は日本人で初めてだ。 「常勤コーチは、シーズン中は常にチームに帯同します。今年、ジャイアンツには10人以上のコーチがいて、それぞれにヘッドコーチ、アシスタントコーチなど役割が分かれます。私の担当は外野守備コーチとベースランニングコーチの補佐ですが、一番大きな仕事は対戦チームの投手分析。投手が球種を投げ分けるときに無意識にでてしまうクセを見抜くことです」