ブルペン捕手から夢を…日本人初メジャーコーチ「独占公開!3つのワールドシリーズ制覇リング」写真
世界最高レベルのメジャーの投手でも、探していけばどこかに投球時のクセはあるという。 「投手によってクセはいろいろです。投げる球種によってセットポジション時のグローブの位置や角度に差が出たり、足でマウンドを蹴る回数が違ったり。特定の球種を投げる際に舌を出す投手や、瞬きの回数が異なる人もいます。牽制球を投げるときもわずかにクセが出る。球場にはリーグで決まったいろいろな位置にカメラがあり、一球ごとの撮影動画はすべてデータベースに入っています。 打者から見えるアングルの動画を見ながら投手の頭の先から足まで分析し、分かりやすく打者に伝えるのです。相手から味方の投手も分析されているため、それを本人に伝えることもします。ただ伝えればよいというものではなく、かえって混乱して調子を崩す投手もいる。どう伝えればよいのかは常に考えています。 テレビ中継では、例えば大谷選手がベンチでタブレット端末を見ているシーンが映ることがあります。あの端末はインターネットには繋がっていませんが、膨大なデータが入っています。相手投手の動画を見てクセを確認することもあれば、自分の過去の打席映像を見て打席に入ったりもします」 ◆シーズン3試合を残して解雇 マイナーリーグを含めると総勢6000人ほどのプレーヤーがしのぎを削り、その頂点でプレーをするのがメジャーリーガー。日本のプロ野球で活躍してメジャーを目指す選手も少なくない。身近で見るメジャーリーグとはどんな世界なのだろう。 「メジャー、マイナーとも選手の解雇は日常茶飯事と言ってもよいくらいです。使えない選手と判断されると監督室に呼ばれ、GMから下のリーグへの降格を言い渡されます。契約によってはそれもできず解雇されてしまう選手もいる。今年はキャプラー監督でさえシーズン3試合を残して解雇されました。華やかさと厳しさが隣り合わせの世界です」 明日の保証はない厳しい世界だが、メジャーで長年活躍する選手には特徴があるという。 「野球がうまいだけでなく優れた人間性を持っています。若い選手で実力だけみればすぐにメジャーで活躍できる素質を持った選手もたくさんいますが、人間性が伴わないと判断されると上がって来られないのです。だから、メジャーで活躍した選手で性格の悪い人を見たことはありません。 人間がしっかりしているからこそ長い間、第一線で活躍できる。同じポジションでレギュラーを競う選手はいますが、闘争心をむき出しにはせずシーズンを優勝するために皆、頑張ります。監督と選手の関係も一方的ではなくお互いのリスペクト(尊重)が基本。それは上のレベルにいくほど感じます。 通算165勝を挙げたスター投手のバリー・ジト氏は、私がブルペン捕手時代に肘を壊したとき、良い病院を紹介してくれ、治療費まで負担してくれました。年齢や立場に関係なく、相手を尊重しないと相手からもそうされないというのは、アメリカに来て学んだことの一つです」