尹錫悦氏を検事総長に任命…文在寅氏は「欺かれた」のか [韓国記者コラム]
【01月06日 KOREA WAVE】2019年7月25日、ユン・ソンニョル(ユン氏錫悦)氏はソウル中央地検長から第59代検事総長に就任した。この異例の人事を主導したのは当時のムン・ジェイン(文在寅)大統領だった。ムン氏は自身が目指す検察改革の実現にユン氏を適任と見込んだ。しかし、その選択が後に自身の理念と大きく乖離する結果を招くことになる。 ムン氏は検察改革を最優先課題と掲げた。その実現のために検察の権力を制限し、警察との捜査権調整を進めていた。ムン氏がユン氏を検事総長に任命した背景には、ユン氏が改革の方針に反対しないと考えたことがある。実際、2019年7月9日の国会での人事聴聞会で、ユン氏は「捜査権と起訴権を分離するのは非常に望ましい方向だ」と述べ、検察の捜査権縮小に同意する姿勢を示していた。 しかし、検事総長就任後、ユン氏の行動はムン氏の期待を裏切った。検察は過剰な捜査をするなど改革の方向性に逆行する姿勢を見せ、ムン政権との対立を深めた。さらに、ユン氏が大統領に就任した後は、検察の捜査権を復活させる「検察捜査権復元」政策を進めるなど、検察改革を否定する動きを強めた。 特に現在、ユン氏が「内乱首謀者」として捜査対象となり、その過程で、過去の言動とかつての行動の矛盾が浮き彫りになっている。ビデオや証言では、ユン氏が複数回にわたり非常戒厳の発動や反対派議員の逮捕を指示していたことが明らかにされている。 ここで問われるのは、ムン氏がユン氏を検事総長に任命した際、彼の本質を見抜けなかったのか、それともユン氏が巧みに改革支持者を装っていたのかという点だ。ユン氏は「人に忠誠を尽くさない」との信念を持つ検事として知られた。一方で、実際には検事総長の地位を得るために自身の理念を偽ったのではないかとの疑念が残る。 ムン氏がユン氏を選んだのは、ユン氏の改革支持という言葉を信じたからだ。しかし、ユン氏の行動が示しているのは、権力への強い執着心とそのための欺瞞だ。ユン氏が非常戒厳令を指示したことが事実であれば、それは民主主義を危機に陥れる行為であり、韓国の憲政史において重大な汚点となるだろう。 この事態を招いた責任は、ユン氏を選んだ人々にあるのか、それとも真実を装い人々を欺いたユン氏自身にあるのか。答えは明確ではない。ただ一つだけ言えるのは、多くの人々が法治国家において、まさか選挙で選ばれた指導者が「親衛隊クーデター」を企てるとは夢にも思わなかったという点だ。【news1 イ・スンファン記者】 (c)KOREA WAVE/AFPBB News
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