「事業者だけで公共交通維持は難しい」、赤字山積のJR四国 待ったなしのローカル線議論、新旧社長を直撃
6月下旬、JR四国社長に四之宮和幸氏が就任した。社内外から社長候補の本命とされた人物は最初の記者会見でいきなり「(赤字ローカル線の在り方を巡る議論は)協議体の立ち上げにはこだわらない」と述べた。前社長の西牧世博氏(現会長)が自治体と論点を整理する「入り口の議論」を2024年度中に始めたい意向を示してきただけに、方針転換とも受け取れる発言は報道陣を困惑させた。JR四国はJR旅客6社で最も規模が小さく、赤字線区が大部分を占める。2020年には国から経営改善の指導を受けた。四之宮氏の真意を確かめるべく7月にインタビューし、西牧氏からも話を聴いた。(共同通信=広川隆秀) 【写真】小田急電鉄の特急ロマンスカー「VSE」 ラストランを迎え、最終到着地の成城学園前駅に到着 23年
▽会社発足時から逆風 ―旧日本国有鉄道(国鉄)の分割民営化2年後の1989年にJR四国に入社しました。会社の経営状況をどう見ていますか。 以下、四之宮氏「JR四国は発足した時から赤字が前提で、国からの経営安定基金の運用益で成立しています」 「四国は全国に先駆けて、1985年から人口減少が進んでいました。鉄道の利用は通勤や通学といった日々の生活での移動が主で、定住人口に依存します。緩やかに逆風が吹く中、高速道路もそれ以外の国道も整備が進み、相対的に鉄道の競争力が低下していた時代です」 「ただ、それでも私が入社した頃は日本中の景気は良かったのです。1988年には(岡山県と香川県を結ぶ)瀬戸大橋線が開業。その効果で、本来抱える人口減の問題認識が薄れ、会社としては目先の収入増に力を入れていました」 ―2020年からの新型コロナウイルス流行の影響で会社の経営は危機的な状況になりました。
「当時社長だった西牧氏は『会社発足以来の危機的状況』といった表現をしたと思います。大変苦しい、とんでもない時代でした。しかし、2024年3月期連結決算は(最終的な損益を示す)純損益が35億円の黒字になりました。今はある意味でプラスマイナスゼロのところで、腰を据えて長期目線でやっていける状況まで来ました。第2の創業期としてリスタート(再出発)する時期だと思っています」 ▽議論は2025年以降か ―赤字ローカル線を巡る議論について、西牧氏はまず自治体と論点を整理する話し合いをしたい考えを示していました。進捗はありますか。 「協議体づくりは進んでいないのが実態です。JR四国の場合、(2020年に)国から受けた経営改善指導で25年までに全線区で交通体系の在り方について検討することが宿題とされています。利用状況の少ない路線の収支改善をすれば解決するわけではないのが難しい。どの線区から、どの自治体を含めて協議するのか、まだ方策を打ち出せていません」