野球をしている息子からやる気を感じられず虚無感を憶えている50歳女性に、鴻上尚史が伝えた「息子は人生の大きな瀬戸際にいる」の真意とは
練習をしていく中で、自分の実力がだんだんと見えてきた。中学校の時は、自分の実力は間違いなく、周りより上だと思った。打率、得点率などの数字や守備のうまさが、それを明確に保証していた。 野球はデータのスポーツだから。 高校に入って、数字が自分の実力を突きつけてきた。 悔しいけれど、「こいつには、かないそうにない」という同級生がたくさんいる。 認めたくないけれど、それは「努力でなんとかなるレベルじゃない」という予感がする。 いや、小学校からやってきた野球で、そんなことは認めたくない。けれど、素材や素質や才能を感じると、自分とは違うと思う。 自分はどうしたらいいんだろう。ここまで来たのに。母親と二人暮らしまでして、ここに来たのに。このままだと、レギュラーになれない可能性がとても強い。それは、自分がずっと野球をやっていたからこそ、分かる。自分の実力と限界は、分かる。どうしたらいいんだ。 ……これが僕の想像です。もちろん、間違っているかもしれません。でも、野球以外に熱中していることがないのに、野球への意欲が減っているのなら、こう考えるのが一番近いんじゃないかと思っています。 もちろん、1年生ですから、「レギュラーから外れる」なんていうはっきりとした意識じゃないかもしれません。でも、「俺よりうまい奴が何人もいる」という意識に苦しめられるようになったんじゃないでしょうか。 そして、それは「努力でなんとかなるレベルじゃない」と思えたとしたら、やる気なんか出て来ないと僕は想像します。 だって、同級生に、高校生の時代の大谷翔平さんやイチローさんクラスとは言わなくても、プロ野球でバリバリやっていけるような人がいたら、「努力の前に、才能とか素材とか素質の問題だよなあ」と思ってしまうと感じるのです。 でもね、それを自分から口に出して認めるのは悔しいし、悲しいし、絶対嫌だと思います。 だから母親に聞かれても、「別に何も無い」としか言えないのだと思うのです。だって、「同級生に、自分よりうまい人が何人もいる。自分の実力は何十人もいる同級生の中で、下の方だった。レギュラーになれる可能性はない」なんてことは、悔しくて口にできるはずがないのです。自分の中で悶々と悩んでいても、それを口にすることは別です。
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