なぜ大谷翔平は万全だったはずの復帰ロードに躓いたのか…来季の二刀流復活の可能性は?
エンゼルスは3日(日本時間4日)、右腕の違和感を訴えてMRI検査を受けていた大谷翔平投手(26)が右前腕屈筋回内筋損傷と診断されたと発表した。損傷の程度は「グレード1から2」というもので、投球再開まで4週間から6週間かかり、60試合と短い今シーズンでの登板は絶望的となった。故障者リストには入らず、今後はDHとしての出場の可能性が模索されるというが、なぜ順調だった復帰ロードに躓いたのか。来季の二刀流復活は可能なのだろうか。
投球に重要な役割を持つ筋肉の損傷
2018年10月にトミー・ジョン手術を受けた大谷は、2日(日本時間3日)のアストロズ戦で今季2度目の先発マウンドに上がったが、5四球を出した2回に、この日、最速156キロをマークしていたフォーシームの球速が143キロ、144キロに落ちる異変が発生。50球でマウンドを降り、試合後、違和感を訴えMRI検査を受けていた。 この「右前腕屈筋回内筋損傷」とはどんな故障なのだろうか。 スポーツ医学の専門医によると、右前腕屈筋回内筋とは、「肘の上、上腕部の一番端についていて、大谷選手が再生手術を受けた側副靭帯の表層に近いところにある筋肉」だという。役割は、「ピッチングの動作には、肘のテイクバックからリリースまで肘関節の外旋、内旋の動きが必要になりますが、回内筋は、内から外へのいわゆる外旋の動作の際に使う筋肉です。またボールをリリースする際にはスナップを使い、手首を曲げ、指を曲げようとしながら強い力でボールを離しますが、その時にも使われる筋肉です。ピッチングに重要な役割があります」というもの。 そこを痛めたのだから大谷がコントロールを制御できなくなり、突然、球速が10キロ近く落ちたのも無理はなかった。 「グレード1からグレード2」という損傷度合も軽傷の部類に入るそう。 「おそらく断裂はしていません。筋肉が引き伸ばされ、MRIの信号に変化が出たと考えられます。筋肉が断裂して、そこがへこんだりしない程度の小さなもので、ひどい状態ではないと推測されます」 ピッチング再開まで「4週間から6週間」とされた所見理由は、「それが筋肉再生にかかる一般的な時間だからです。ただ、そこから投球練習の再開ですから今シーズン中の復帰は間に合いません」という。やはり今季の復帰は絶望的だ。 大谷は1年10か月に及ぶリハビリをプログラムに従って順調に進めてきた。なのになぜ今回のような異変が出てしまったのか。 同医師は、こんな見方をしている。 「トミー・ジョン手術後に、この表層の筋肉を傷めるケースがよくあるんです。肘の側副靭帯を痛めた人のリハビリは、その周辺の筋肉を鍛えることでカバーしていくのですが、大谷選手のように通常よりも速い球を投げる人は、より強い負担が靭帯にも、周辺の筋肉にも同時にかかるため時間がかかります。おそらくですが、新型コロナの影響で、実戦登板が少なかったため、そこまでは全力で投げてはいなかったのではないでしょうか。それが今回、いきなり全力で投げたことで、靭帯を守ろうとしている筋肉を傷めてしまったのかもしれません」