新たに発見された「ハロウィン彗星」、太陽に近づきすぎて崩壊
数百年前に分裂した彗星に由来
C/2024 S1は、太陽に接近する彗星「サン・グレーザー」(太陽をかすめて進むもの、の意味)の中でも「クロイツ群」と呼ばれるもののひとつです。クロイツ群は数百年前に分裂したひとつの彗星に由来すると考えられていて、そのことを証明した天文学者のハインリヒ・クロイツにちなんで名付けられました。 クロイツ群の彗星はすべて太陽に接近する類似の軌道を持っていて、ひとつひとつが比較的小さいため、太陽に接近するとバラバラになるか、太陽に衝突してしまうかになりがちです。それでも中には無事に乗り越えるものもあるため、C/2024 S1もそれが期待されていました。 クロイツ群の彗星としては、2011年に発見されたラヴジョイ彗星は太陽に最接近後も持ちこたえ、青と緑の光で夜空を彩りました。ただその数日後、彗星の核が崩壊してしまいました。少し古いところでは1965年に日本のアマチュア天文家が発見した池谷・関彗星は非常に明るく、昼間の太陽の近くでも見られるほどでした。太陽接近後に3つ程度に分裂しましたが、分裂した状態でも尾を引いているのが肉眼で見えたそうです。 C/2024 S1は崩壊しなければ、見かけの等級は金星(マイナス4.6)より明るく、マイナス7ほどに達したと推定されています。そんな天体ショーが見られなかったのは残念ですが、観測機SOHOでは1995年の打ち上げ以来、5000以上の彗星を発見しています。これからもまだまだ、美しい彗星を見つけてくれることに期待しましょう。
福田ミホ