「かっこいい寝たきり」を将来のキャリアに。テクノロジーの力で、出かけなくても出会える世界へ
多様な社会を目指す働きかけが数多く見受けられるが、学校や職場、地域、あるいは趣味などのコミュニティにおいて、障がいがある人々と触れ合う機会が少ない気がするのはなぜだろう。「ベッドの上にいながら、会いたい人と会い、社会に参画できる未来の実現」を理念にロボット開発を行う、株式会社オリィ研究所の所長・吉藤オリィさんに、障がい者の社会参画を支える技術とそれによるサステナビリティについて、三菱電機イベントスクエアMEToA Ginza 「from VOICE」編集部が伺った。
"ワクワク"するサステナブルのヒントを教えてくれた人
吉藤 オリィさん 株式会社オリィ研究所共同創業者代表取締役所長CVO。分身ロボット「OriHime」の開発者。高専で人工知能を学んだ後、早稲田大学創造理工学部へ進学。自身の不登校の体験をもとに、対孤独用分身コミュニケーションロボット「OriHime」を開発するほか、視線入力を用いた意思伝達装置「OriHime eye+ switch」、車椅子アプリ「WheeLog!」、寝たきりでも働けるカフェ「分身ロボットカフェ」等を開発。米Forbesが選ぶアジアを代表する30名「30 under 30 」、Google impact challengeグランプリ、グッドデザイン大賞2021、Ars Electronica(ゴールデンニカ)など受賞。
接し方がわからないなら、友だちになればいい
「街なかで寝たきりの人とすれ違うことはまずないですし、特別支援学校があるので、障がいを持っている人と同じ学校で学ぶ経験もほぼありません。障がい者に対してどう接していいかわからないという話もよく聞きますが、その感覚は江戸時代に外国人を見た人の反応に近しい気がします。つまり、現在の私たちは、障がい者と出会い、関わり合うことに慣れていないだけだと思うのです」 分身ロボットの開発を通して、外出困難者の孤独化の解決を図る、オリィ研究所の吉藤オリィさんは、まずVOICEについてこのように分析してくれた。また一方で、障がい者が身近に存在するのに認識できていない可能性もあるとも指摘する。 「例えば障がいを持つ子どもの両親、引きこもりの人などは、自身が障がい者手帳を持っていなくとも、移動や就労等の社会参画に困難を抱えています。こういったケースは、身近に存在していたとしても気が付きにくい。『障がいがある』という表現もまた、多様な状態を含んでいることを意識するべきだと思います」 そのうえで吉藤さんが冒頭で語ったように、障がいを持つ人の存在を知り、関わり合うことに慣れていないという課題を乗り越えるためにはどうしたらいいのだろう。 「重要なのは、障がいの有無に関わらずに対等な立場で出会い、友だちになれるような機会や場所を作ること。同僚と一緒に働くうちに仲良くなったり、バーでたまたま出会ったりなどといった、移動ありきで起こる出来事を、車椅子やベッドの上にいながら体験できる世の中を考えることが、障がい者との共生社会への近道になると思います。そして私は、そうした社会の実現に向けて、テクノロジーを活用していけると考えています」