日銀は12月に追加利上げに動くか
物価上昇率は2%を超える水準が続いており、それは来年も変わらないだろう。しかしこの物価上昇率の上振れは、円安による輸入物価の上昇という一時的な要因によるところが大きい。為替が安定を取り戻せば、物価上昇率は1%以下まで低下していくのではないか。円安の影響を特に受ける食料・エネルギーを除くコアコアCPIは、既に1%台半ば程度まで下振れている(図表1、図表2)。 他方、実質短期金利の中立的な水準、いわゆる自然利子率は、日本銀行が示す様々な試算結果の平均でみると、小幅マイナスと考えられる。インフレ率のトレンドと自然利子率の合計から、1%弱程度が中立的な政策金利の水準、いわゆるターミナルレートと見る。
利上げペースは世界経済や為替など外部要因の影響を強く受ける
仮にもう一段引き上げられるとしても1%までと見ておきたい。現状では、短期金利の水準はかなり低いとの認識から、日本銀行は概ね一定の間隔で利上げをしている状況だ。しかし、1%程度の名目中立金利の水準が近づいてくれば、日本銀行は経済への影響を指標で判断する実証的なアプローチとなり、利上げのペースが相当低下することが予想される。 0.5%への利上げが2024年12月に実施される場合、0.75%に引き上げられるのは2025年6月と見たい。そこで金利は打ち止めとなるのが現時点でのメインシナリオであるが、かりに1%まで引き上げられる場合には、2026年1月とみる。 ターミナルレートは国内の経済情勢によって決まるものだが、そこに到着するスピードは、世界経済や為替動向など外部要因の影響を強く受ける。植田総裁は、トランプ氏の経済政策を注視しており、米国や世界経済をかなり悪化させるような一律追加関税策が打ち出されれば、次回の利上げ以降の日本銀行の政策は、しばらく様子見となる可能性もあるだろう。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
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