日銀は12月に追加利上げに動くか
トランプトレード、円安は追加利上げを後押し
第2は、トランプトレードとドル円の動きだ。日本銀行が7月に追加利上げを実施したことや政府が為替介入を実施したことを受けて、7月から9月にかけて円高が進み、一時、1ドル139円台にまで達した。円高は先行きの物価見通しの上振れリスクを低下させることから、日本銀行の追加利上げを慎重にさせる要因になる。 ただし、10月に入るとトランプ氏の勝利を予想して、再び円安が進んだ。トランプ氏の経済政策が、米国経済の一人勝ちの傾向を一層強めるとの期待や、追加関税による物価高が金利見通しを押し上げ、ドル高を生じさせるとの見方が強まったためだ。 ドル円が155円~160円で定着し、政府が円買いドル売りの為替介入を実施する場合には、政府は日本銀行にも円安阻止に向けた協調策を求めるため、日本銀行は12月に追加利上げを行う可能性がかなり高まるだろう。 しかし、追加関税などのトランプ氏の経済政策は、米国経済にも相応に打撃となる可能性が高い。この点が認識されたことで、足もとで為替市場はやや円高に振れている。いわば、トランプトレードの見直しが起こっているのである。この流れが続けば、日本銀行が来年1月まで利上げを先送りすることを後押しするものとなる可能性がある。 以上の点を総合的に考え、さらに植田総裁が先週末の日経新聞のインタビューで「追加利上げは近づいているといえる」と発言したことを踏まえると、現時点では、日本銀行は1月ではなく12月に追加利上げを行う可能性がわずかに高いように思われる。
ターミナルレートは1%程度か
日本銀行が12月に追加利上げを行うのか、1月に利上げを行うのかは、日本経済や金融市場の先行きのトレンドを考える上ではあまり重要でないだろう。重要なのは、日本銀行がどこまで利上げを行うかである。 物価上昇率のトレンドが物価目標値の2%に達するのであれば、政策金利は2%近くまで上昇することになるが、その可能性を見ている市場関係者は多くない。ターミナルレート(金利の最終到達点)の水準は1%程度というのがコンセンサスではないか。