1200袋の大量ゴミ…「実家に帰省したら“ゴミ屋敷”になっていた」片付けを決意した“子の顛末”ーー「生前整理」をするか否か、それぞれの選択を追った
高齢者の1人暮らしにしては広すぎる家だ。3つある部屋はモノが詰め込まれているだけで生活の場としては機能していない。ただ、母は長年住んできたこの家に愛着を持っていたようで、安くない家賃を払っていても、小さい家に引っ越すことは考えられなかった。そして、荷物が減ることはなく、どんどんと増えていってしまった。 今回の依頼主である長男も、はじめのうちは「少しは片付けたほうがいいんじゃないか」と実家に帰るたびに母を説得していたという。
「ちょっとずつ私が片付けてもいたんですけど、それが母のストレスになっていたみたいです。“捨てたらええやん”って言うのは簡単ですけど、本人からしたらそれがプレッシャーになっていたようで。歳をとって動きにくくなってきていたし、膝に水が溜まったりもしていて、ストレスで別の病気になるよりも好きなように暮らしてもらったほうがいいんじゃないかと考えるようになったんです」(長男) それからは実家に帰るたびに増えていく荷物には触れることなく、楽しく会話だけをして帰るようにした。長男が昔使っていた子ども部屋にも入ることができない状況になっていたというが、母のことを第一に考えると、そうするのが自然な選択だった。
「母にはストレスを与えないような形で、過ごしてもらえたかなとは思っています。僕よりも先に逝ってしまうのだから、その短い人生を、もう好きに生きてほしかった。それは多少なりともできたのかな」(長男) 二見氏も、「息子さんの選択は決して間違っていないと思います。すごく大切なこと。人に迷惑をかけていなければ、好きに生きればいいんじゃないかな」と話す。生前整理は「子のために親がしておく“べき”こと」とされているが、何事においても絶対はないのだ。
■「生前整理をしない」という選択をした意味 亡くなってからバタバタするのではなく、生きているうちに生前整理をしておいたほうがいい理由もわかる。それができなかったゆえに、長男は1年間の家賃を払い続けた揚げ句、最終的には業者にお金を払って片付けをすることになった。「お金と時間の無駄」という声もあるかもしれないが、長男に後悔はなかった。 「母の死亡届を出したとき、お役所仕事なので仕方のないことなんですが、紙に“×”をつけて終わりだったんですね。そのときに無情を感じたというか、人が亡くなるってこういうものなんだって。もし、母が亡くなった翌月に業者を呼んでいたとしたら、心にポカンと穴が空いたような気持ちになっていたかもしれません」
作業は9人のスタッフで行われ、ものの4~5時間で母が住んだ家は空っぽになった。しかし、長男の表情は晴れやかだった。それは、「生前整理をしない」という選択と、1年という「片付けない」期間があったからこそである。 【写真】「築150年のお屋敷にあった謎の隠し扉」「1200袋の大量ゴミ」…広すぎるゴミ屋敷がスッキリ綺麗になった! 【ビフォーアフターを見る】(37枚)
國友 公司 :ルポライター