ユニクロの1歩先? 絶好調の業務スーパー「最強コスパ」を実現する“スゴイ仕組み”
物価上昇が続く中、現在、取り扱い商品の“コスパの高さ”によって消費者の支持を集めているのが、神戸物産の運営する「業務スーパー」だ。なぜ、同社はほかの食品スーパーを上回るほどのコスパを実現できるのだろうか。その秘密を探ると、あのユニクロや無印良品、ニトリ、コンビニ各社など、大手小売業のさらに先を行く、独自の戦略があった。 【詳細な図や写真】図表1:神戸物産の中間決算、業績推移
なぜ、業務スーパーは消費者に支持される?
業務スーパーを運営する神戸物産の業績が、順調に推移している。2024年4月中間決算で、売上2,461億円、経常利益180億円となり、増収増益を達成、通期でも過去最高を更新見込という勢いである(図表1、2)。 業務スーパーと言えば、業務用(飲食店向け)の大容量パックのプライベートブランド(PB:非メーカーによるブランド)商品を提供するスーパーなのだが、一般にも開放しているため、コスパの高いスーパーとしての評判が拡散し、消費者にも広く浸透してきた。 コロナ禍終息後、原材料高騰、エネルギーコストの上昇などもあって、前期は増収減益となっていたが、さらなる売上拡大とコスト削減努力で収益面も改善した。実質賃金のマイナスが25カ月(2024年4月)も続く中、消費者の価格志向は高まりつつあり、業務スーパーが、これまで以上に支持される環境になってきたのである(図表3)。 それでは、なぜ、業務スーパーはこれほどの“コスパ”を実現できるのだろうか。消費者に喜ばれる”コスパの高さ”の秘密を探ると、ユニクロや無印良品、ニトリなどの小売大手の1歩先を行く、独自の戦略が関係しているようだ。
ユニクロの先を行く? 業務スーパー「最強コスパ」のカラクリ
業務スーパーのコスパを実現しているのは、神戸物産が構築している製造小売業(SPA)としてのサプライチェーンにある。国内外の食品メーカーとのアライアンスによってPB商品を開発し、地道な品質改善でコスパを高めてきたことで、そのコスパはすでに多くの消費者の支持を得られている。こう言うと、SPAタイプの勝ち組小売業(ファストリ、ニトリ、無印良品…など)に共通した構造であるのだが、神戸物産の場合は、さらに踏み込んでいる。 国内の食品メーカーをM&Aによってグループ化しており、国内26カ所の自社工場を稼働させている。国内の中小食品メーカーには、高い製造技術を持っているにも関わらず、伸び悩む国内需要と過当競争により、経営不振に陥っている企業は多い。本来、こうした中小食品メーカーの工場は十分な受注を確保して稼働率を上げれば、十分にやっていける。そこで業務スーパーは、自社のPBの製造でこうした工場をフル稼働させ、高い品質かつ低価格のPBの生産拠点を確保しつつ、食品メーカーの再生を図っている。これが神戸物産のやり方である。 直近の業務スーパー出荷額(既存店ベース)の増減率の推移を見ても、おおむね、スーパーの平均値を大きく上回って推移していることが分かる(図表4)。 少し前まで、日本の消費者は、食品メーカーが作るNB(ナショナルブランド)信仰が強いと言われ、小売のPBの品質には懐疑的で安くても手に取らない消費者は多かった。しかし、値上げが続き、その負担感も大きいことから、実験的にPBを試す消費者が増えているという。 買ってみて十分な品質であると分かれば、リピート購買につながるのだが、業務スーパーは着実にリピーターを増やしているようで、SNSなどでも度々話題になっている。デフレ時代が終焉し、値上がりが当たり前となってきたという環境変化は、コスパに定評ある業務スーパーにとって追い風となっているのである。 このように業務スーパーのコスパの基盤が、その商品開発、製造管理にあることは間違いだが、グループ工場の稼働率維持のためには、持続的な増収を達成していく販売力が前提となっている。 業務スーパーの店舗は、2024年4月時点で1062店舗に達しているのだが、直営店は4店舗のみであり、1058店舗はフランチャイズ(FC)加盟企業による店舗である。店舗数は2020年(922店)から2024年で140店舗(15%増)増えており、FC加盟店パートナーとの連携による実績と言えるだろう。 FC加盟店と本部によって構成されるチェーンストアと言えば、コンビニが代表的な存在だが、業務スーパーのFC加盟店は構成が異なっており、コンビニのように脱サラ個人経営者ではなく、地場の中堅中小小売事業者をパートナーとしていることが特徴だ。それはどういうことか。ちょっと説明したい。