ユニクロの1歩先? 絶好調の業務スーパー「最強コスパ」を実現する“スゴイ仕組み”
超特殊なフランチャイズ戦略、加盟店の経営力が優れてるワケ
業務スーパーは2000年代以降、本格的にFC加盟企業を増やしていったが、参加したのは各地の中堅中小小売業であった。この当時、ホームセンター(HC)、家電量販店、食品スーパーといった専門店チェーンが各地に勃興して、存続をかけた競争時代が始まっていた。 その後、各業態で現在の専門店大手(HCのカインズ、DCM、コーナン、家電のヤマダ、ケーズ、エディオン、などのイメージ)が台頭する中で、敗退する企業が数多く発生した。そうした企業の中には、不採算店舗を業務スーパーに転換したり、自社店舗の一部に業務スーパーを出店することで建て直す、という選択をするものがあった。現在、業務スーパーのFC店を複数運営する小売業者がいくつもあるが、彼らの加盟の発端はこうした背景による。 神戸物産が、公式にFC加盟店メンバーを示した資料は見当たらなかったため、公開情報から分かる範囲で、複数店を運営する加盟企業を抽出してみたのが図表5である。 これらの企業の多くは、祖業は家電店だったりホームセンターだったりするのだが、銘柄を見てもらうと分かる通り、その分野では勝ち組とはなっていない。しかし、業務スーパーに転換したり、業務スーパーとのハイブリッド店を作ったりして、別業態となって存在感を増している。 たとえば、G-7ホールディングス、マキヤ、オーシャンシステムの各社は上場企業として情報開示もしているため、業務スーパーがどのように各社の成長に貢献したかを見ることができる。ここからは、業務スーパーをフランチャイズ経営することで業績がどう変化していったのか、各社の売上を見ながら解説する。
【図解】業務スーパー「フランチャイズ加盟店」の業績が凄い
G-7ホールディングスは、業務スーパー191店舗を運営する最大の加盟企業で、カー用品店(オートバックスFC)が祖業ながら、カー用品店普及と飽和を見越して、2002年業務スーパーのFC事業をスタートした加盟店の老舗。今では業務スーパーと相乗効果のある精肉チェーン、ミニスーパー、農産物直売場なども運営し、さまざまな共同出店などによるシナジー追及も行っている。 2024年3月期の業務スーパー事業の売上は1,063億円、セグメント利益48億円とグループの過半を占め、関連生鮮部門も入れると大半を食品流通が貢献する構造になっている。今後も都市部のクルマ離れが進む中、カー用品の成長は見込み難く、業務スーパーを軸とした成長を計画している(図表6)。 一方、かつて家電量販店だったマキヤは、今ではディスカウントストアが中心業態ではあるが、業務スーパー罷業への転換を足掛かりに食品事業を拡大し、食品スーパーのM&Aなども実行しつつ、いまの食品事業中心のポートフォリオとなった。業務スーパーのFC加盟が事業継続の契機となったこともあり、リサイクルショップ、100円ショップなどでもFC加盟店を運営、リスク分散と事業の種まきに活用している(図表7)。 さらに新潟の食品スーパーが祖業のオーシャンシステムは、本業との融合によって祖業を維持防衛しつつ、業務スーパーを関東甲信越に広域展開することで成長基調を維持している。食品スーパー由来の生鮮部門と業務スーパーのコスパ商品(業務スーパーには基本生鮮はない)とを組み合わせたスーパー「チャレンジャー」を業態開発し、スーパーとしての商圏防衛に成功している。 新潟は全国レベルの有力スーパー「アクシアル・リテイリング」(連結売上2,700億円超新潟県内1,900億円超)と、宿敵ウオロク(売上840億円超)という2強が、イオンと3つ巴を繰り広げる激戦区であり、再編統合の激しい土地柄である。オーシャンシステムは業務スーパーと組むことでその独立性を守り、成長を維持しているのである(図表8)。 業務スーパー、というビジネスモデルは、商品のコスパに優れていることは言うまでもないが、その独特なアライアンス戦略が国内有数の食品流通チャネルに押し上げたのだろう。製造工程のグループ工場は、技術はあるが商売下手な食品メーカーをフル稼働で再生し、販売パートナーは、祖業で勝ち組にはなれなかったが、生存意欲の高い地場小売業をFC加盟店として、再成長の道を拓いた。 神戸物産とは、食品製版再生プラットフォーマーとも言うべき存在のように見える。そして、このプラットフォームの参加者はこれからまだまだ増えていくことになるだろう。
執筆:nakaja lab 代表取締役 流通アナリスト/中小企業診断士 中井彰人