カズ所属の鈴鹿は全役員辞任と実兄の三浦泰年監督の代表取締役就任でJ3入り資格を取り戻せるか?
今シーズンから元日本代表FW三浦知良(カズ、55)が所属する日本フットボールリーグ(JFL)の鈴鹿ポイントゲッターズは27日、吉田雅一代表取締役社長を含めた全役員4人が辞任し、6人の新役員選任を決議したと発表した。カズの実兄、三浦泰年監督(56)が代表取締役GMを兼ねる仰天人事でガバナンス体制を刷新。過去の八百長未遂行為などガバナンス不備が問題視されて資格を一時的に停止されている、J3昇格への前提条件となる「Jリーグ百年構想クラブ」の復活を目指す。
前代未聞の八百長未遂行為と元執行役員逮捕の不祥事
シーズンの真っ只中で、鈴鹿を経営する株式会社アンリミテッドが役員全員を入れ替える人事を敢行した。就任から3年目を迎えていた吉田社長を含めた4人の役員がすべて辞任し、新たに6人の役員選任を決議したと公式ホームページ上で発表した。 しかも、新役員のなかには代表取締役として、昨年7月から鈴鹿の監督兼GMを務める三浦氏が名を連ねていた。一人で三役を務める三浦氏がクラブを通じて発表したコメントの冒頭部分に、仰天人事の意味が凝縮されている。 「このたびは世間を騒がせ、関係するみなさま方にご迷惑をかけてきたことに対し、クラブを代表して深くお詫び申し上げます。そんななかにおいても、鈴鹿ポイントゲッターズにかかわるすべてのみなさまから叱咤激励いただき、心より感謝申し上げます」 鈴鹿は今年2月に、J3へ昇格するための前提条件となる「Jリーグ百年構想クラブ」資格を一時的に停止とする処分をJリーグから科されている。 資格停止の理由に関して、2月の段階ではクラブのガバナンス体制に不備があると判断しうる複数の事例が、Jリーグ百年構想クラブ規程第7条内の「Jリーグの目的に反する行為」に該当すると考えられる――にとどめられていた。 しかし、鈴鹿が所属するJFLの報告を受けて独自調査を進めてきた、最上位団体の日本サッカー協会の規律委員会は4月に、過去に八百長未遂行為があったと認定。八百長そのものはチームの反発もあって実践されなかったものの、違法性は排除できないとして罰金500万円と、企図した当事者に対するサッカー関連活動禁止が科された。 個人的な処分を受けたのは3人。失点方法など、八百長行為に関する具体的な指示を出したとして2年間の活動禁止を科された元執行役員の塩見大輔容疑者は今月20日、クラブに対する恐喝未遂容疑で三重県警鈴鹿署に逮捕された。 昨年末に自身のツイッター上で、クラブ内の不正行為を立て続けに告発する騒動を起こした塩見容疑者に対して、鈴鹿は同容疑者が退職した昨年7月の段階で2500万円を支払っている。Jリーグはこの金銭のやり取りも不適切と見なしていた。 そして、役職の辞任とさらに現金5000万円を要求されていたオーナーの西岡保之氏が3ヵ月、吉田社長が1ヵ月の活動禁止をそれぞれ科された。しかし、塩見容疑者と比べて処分が軽いと、ネット上では批判が殺到する事態を招いた。 前代未聞の八百長未遂行為は、ソニー仙台との2020シーズン最終節前に起こった。まだJリーグ百年構想クラブに認定されていなかった鈴鹿は、ライバルのヴィアティン三重が県勢初のJクラブになる事態を回避するために、最終節を前にして三重よりも上位につけていた仙台に負けた方が望ましい状況になりうると判断した。 こうした経緯が、三浦氏が言及した「世間を騒がせた行為」となる。そして、Jリーグ百年構想クラブの資格停止処分を解除するための条件として、Jリーグ側は「ガバナンス体制の改善」と「ステークホルダーからの支援継続」の2点をあげていた。 J3昇格を果たすためには、Jリーグ百年構想クラブとして、今月末までに来シーズンのJ3クラブライセンスを申請。それが承認された上で、今シーズンのJFLで4位以内に入り、なおかつ百年構想クラブ内で上位2位を満たす必要があった。 つまり、Jリーグ百年構想クラブの資格が停止されたままでは、J3ライセンスの申請すらかなわない。しかも、処分を解除するかどうかを審議するJリーグ理事会は今日28日に開催される。21日の臨時株主総会で人事を決議し、27日に管轄する津地方法務局に申請書類を提出するぎりぎりのタイミングで、鈴鹿としての姿勢を示した形となった。