カズ所属の鈴鹿は全役員辞任と実兄の三浦泰年監督の代表取締役就任でJ3入り資格を取り戻せるか?
旧体制では常勤役員が4人のなかで吉田前社長だけで、取締役会は完全に有名無実化していた。監査役も非常勤で、権限も会計監査に限定されていた。必然的に株式会社アンリミテッドの発行株式の98.5%を保有していた、オーナーである西岡前会長の影響を強く受ける状況ですべての意思決定が下されてきた。 鈴鹿はまず取締役会規程を整備するために、三浦氏を代表取締役として選任した。代表権を持たせた理由を、公式ホームページ上に掲載したリリース内で「自治体やステークホルダー、そして選手や従業員からの信頼が非常に厚い」と説明している。 ただ、三浦氏はすでに監督兼GMでもあるため、鈴鹿側は本田技研工業の鈴鹿製作所に勤務した経験があり、今年4月までタイの現地法人社長やアドバイザーを務めた山口隆男氏を代表取締役社長として選任。ダブル代表取締役体制で三浦氏をサポートしながら、法人経営の経験やガバナンスに関する知識を生かす役割を託した。 鈴鹿市出身で9月には74歳になる山口新社長も2月以降の騒動を謝罪した上で、クラブを通じてこんなコメントを発表している。 「三浦代表並びに新体制とともに協力・連携しあって、組織を改善して参りたいと存じます。クラブがスポーツで地域を盛り上げ、子どもたちに夢を与えられる存在になるべく全力を尽くします」 両代表取締役に加えて取締役副社長、専務取締役の計4人を常勤とした上で、取締役会が健全に運営されていく仕組みを構築したと人事の意図を説明している。 鈴鹿は公式ホームページで、一連の決定を「株式会社アンリミテッド役員交代および経営権委譲についてのお知らせ」と題して発表している。経営権委譲に関しては、すでに西岡氏の経営への関与が完全に排除されていて、その上で同氏が保有しているすべての株式の第三者への譲渡に関して、外部の弁護士を介して基本合意していると報告した。 鈴鹿側は株式を譲渡する条件として西岡氏と、同氏が代表取締役を務める株式会社ノーマーク(本社・東京都港区)と利害関係を有しない点を大前提に、地元や近隣地域の企業を中心に進めてきた協議がすでに大詰めを迎えていると明かしている。 旧体制の反省を生かして株主を複数に分散させ、株主間でも監視および監督ができる体制も目指す。八百長未遂行為に関してサッカー関連活動禁止を科されたオーナーと前社長を排除する、クラブとして講じられる最大限の自浄努力の先に待つ状況を、三浦氏は「クラブはこれで過去から脱却し、新しい体制になる」と力を込めて語っている。 「私自身もこれまで以上に、未来へ向けて責任を持って前へ進んでいく所存です」 ピッチ上の戦いに目を移せば、鈴鹿は13試合を終えて5勝2分け6敗と黒星がひとつ先行し、16チーム中で10位に甘んじている。5月15日のHonda FC戦で右太ももを痛めたカズも無得点のまま、公式戦で8試合続けてベンチから外れている。 もっとも、今シーズンのJFLは大混戦になっていて、首位のFC大阪と鈴鹿の勝ち点差は6ポイントにとどまっている。リーグ戦はまだ折り返し前。残り試合が17を数えるだけに、J3昇格をめぐる争いの行方はまだまだわからない。 だからこそ、今日28日のJリーグ理事会が鈴鹿の命運を左右する。 ホームにJリーグ百年構想クラブの奈良クラブを迎える7月2日の次節へ向けて、鈴鹿は28日からトレーニングを再開させる。監督としてチームの指揮を執りながら、代表取締役GMとして理事会決議を待つ。三浦氏の長い一日が始まろうとしている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)