開発者インタビュー、スマートウォッチwena wristが提案するもう一つの解
ただ、それだけ斬新で具体的なアイデアであれば、保守的な大企業よりも、アグレッシブなベンチャー企業のほうがやりやすくなかったのでしょうか。 その点について、對馬さんは「ベンチャーか大企業かは迷いました」と語っていますが、wena wristを開発するならば、搭載する機能や性能を実現するための専門的な知識において大企業のノウハウや資産が大きな武器になるだろうと考え、ソニーモバイルに入社したのだといいます。 「学生時代から、ウェアラブルデバイスで生きていくと腹を括っていました。入社直後に、業務に関係する好きなものを作りながらモノづくりのプロセスを学ぶ研修があり、そこでSmartBand(ソニーモバイルのリストバンド型デバイス)の基盤などを使って作ってみたのが、wena wristの原型です。コンセプトは大学時代から持っていたのですが、それを実際に形にしてみて、意外といけるかもしれないと手ごたえを感じていました」(對馬さん)。
スマートウォッチのトレンドを追随しなかったのはなぜか
このwena wristに対して、筆者はもうひとつ疑問を持っていました。それは、Apple WatchやAndroid Wearのようにディスプレイを持ったスマートウォッチのトレンドに追随しなかったのはなぜかということです。Apple Watchのようにディスプレイを持ったスマートウォッチは様々な機能を持たせることができ、アプリによる拡張性も高い。多くの価値を持たせることができたはずです。最近では米国モトローラや韓国サムスンなどから丸型のディスプレイを持った、よりアナログ時計に近いスマートウォッチも数多く登場しています。 この点について對馬さんは、次のように語っています。 「確かに、現在のスマートウォッチの主流は丸いディスプレイを搭載したり、リューズやベゼルで操作するものも出てきていて、だんだん腕時計の形に近づいている印象があります。しかし、そこまで似せてもやはりディスプレイ上の文字板である以上、画面がオフのときは何も表示されずに黒い状態になります。一方で、腕時計は機能だけでなく、所有感やたたずまい、ファッション性など、感性に訴える面も大切なアイテム。スマートウォッチはどこまで腕時計に近づけても本物の腕時計にはなれなず、カッコよさではアナログ時計には勝てないのです」。 確かに、時計は“時間を確認するため”に使用しますが、そのチョイスの基準はボディやインデックス(文字盤)のデザインが持つ美しさやカッコよさなど、機能以外の部分を重視する傾向があります。末永く使い続けるためには、所有感があり愛着が持てるものである必要があるのです。