開発者インタビュー、スマートウォッチwena wristが提案するもう一つの解
こうした従来のスマートウォッチに対するアプローチとは異なる考え方で生み出されたwena wristは、結果的にクラウドファンディングで多くの支援を集めることになりました。このアナログ時計の価値を残してデジタルならでは機能をデザインするという考え方は、ウェアラブルデバイスが目指すもうひとつの“答え”なのかもしれません。 この点について、對馬さんは、従来のスマートウォッチとは一線を画すコンセプトを生み出した一方で、もちろん彼は世の中にあるスマートウォッチを否定しているわけではありません。「スマートウォッチとアナログ時計の関係というのは、電子書籍と紙の書籍の対比に似ているかもしれません。どちらにもそれぞれの良さがあり、wena wristはスマートウォッチとも、アナログ腕時計とも共存できる関係なのではないかと思います。ディスプレイ型のスマートウォッチは様々な情報を表示したり機能が活用できてとても便利なので、wena wristとはターゲット層が異なるのではないでしょうか」と語っています。
ウェアラブルデバイスは、まだ“なくてはならないもの”になっていない
ただ、スマートウォッチを含むウェアラブルデバイス全体が盛り上がるためには、まだまだ課題があるのが現状です。この点について、對馬さんは「ウェアラブルデバイスは、まだ人々にとって“なくてはならないもの”になっていません。腕に着けてできたら嬉しいことは何かという問いに対する答えもまだ見つかっていない」と語り、ウェアラブルデバイスの存在意義をしっかりと提案していくことが開発者にとって重要なことだという認識を示しています。その答えの一例として語ってくれたのが、“ポケットや鞄から出す手間を省く”という価値です。 例えば、最近ではスマートフォンにNFCが搭載され、決済手段(おサイフケータイ)としてだけでなくチケットや鍵の役割も果たすようになってきました。しかし、実は従来のお金やチケット、鍵がスマートフォンに置き換わったとしても、“ポケットや鞄から出す”という手間は変わりません。実は、実際に使うシーンにおいて“使うために手を動かす”というアクションに大きな違いがないのです。 しかし、それが腕時計型のウェアラブルデバイスに置き換われば、“ポケットから出す”というひと手間はなくなり、腕をかざすだけで様々なことができるようになります。たかがひと手間ですが、定期券を改札に入れていたところからタッチするだけに変わったように、毎日のこうしたひと手間が省かれることで、生活の利便性は大きく変わります。ウェアラブルデバイスを使う必然性やメリットを実感できるシーンを作っていくことが、市場を拡大させるためには重要なのです。