琥珀の中に新種クマムシの化石を発見、「最強生物」の進化の謎に光、8300万~7200万年前
活動を停止した無代謝状態の「乾眠」で過去の大量絶滅を回避した可能性が明らかに
小さな体のクマムシは、究極のサバイバーだ。5億年以上もの間に世界中に広がり、地球で最も厳しい環境のなかも生き延びてきた。そして最新の研究で白亜紀の琥珀に閉じ込められていたクマムシの化石を分析したところ、新種や進化の歴史に加えて、ほかの生物を軒並み絶滅に追いやった大災害をどう生き延びたかについての手掛かりも見つかった。論文は2024年8月6日付けで学術誌「Communications Biology」に発表された。 【関連画像】琥珀中のクマムシ化石とクマムシ2種の復元図 今回発見されたクマムシは、8300万年前から7200万年前の今のカナダで、木の樹脂のなかに閉じ込められた。同じ針葉樹林には、巨大なティラノサウルスや角を持った恐竜がのし歩いていた。 クマムシのうち1匹は「Beorn leggi」という既知の種で、化石のクマムシとして初めて発見されたものだった。そして2匹目は、科学者たちがそれまで見たことのない新種だった。米ハーバード大学の古生物学者マーク・マパロ氏とその研究チームは、これを「Aerobius dactylus」と名付け、ほかの古代種と合わせて進化史を分析した。 Beorn leggiが初めてカナダの琥珀から見つかり、記載されたのは1964年のこと。当時の古生物学者は、判別に苦労したという。それが今では、画像技術の進歩のおかげで細かいところまで見られるようになった。 「過去60年間、多くのクマムシ専門家がこれらの化石を調べようとしてきました。ところが、体が小さすぎて、しかも琥珀の中に埋もれていてはっきりした姿が確認できず、得られる情報には限界がありました」と、米ニュージャージー工科大学の生物学者フィル・バーデン氏は話す。 クマムシはあまりに小さく、足の爪は人間の毛髪の直径の10分の1ほどしかないという。なお氏は今回の研究には関わっていない。 琥珀以外に、クマムシをこれほど細かい部分まで保存できるものはない。しかし、クマムシの化石がめずらしいのは、小さいからだけではない。化石化したクマムシを研究する古生物学者もほとんどいないのだ。クマムシの化石の存在が知られていると言うだけでも、研究仲間に驚かれるとマパロ氏は言う。