「富士山噴火」は必ず起きる…通り過ぎた後は「すべて」を焼き尽くす「火砕流」の想像を絶する「高温」と「スピード」
もし、いま富士山が噴火したら、なにが起こるのか、あなたはご存知ですか?―― 2011年3月に起こった東日本大震災は、富士山を「噴火するかもしれない山」から「100パーセント噴火する山」に変容してしまいました。 【画像】巨大地震が2030年代に起こる!? 専門家が本気で警鐘するわけを図で見る 富士山が噴火したとき、何が起こるのか? 火山の第一人者で、ニュース解説などでもお馴染みの地球科学者・鎌田 浩毅さんが解説します。今回は「火砕流」について取り上げます。 火山の噴火で生じるのは、溶岩や飛んでくる噴石ばかりではありません。山肌を流れ降ってくる「火砕流」とはどういうものか、その恐ろしさなどについて、ご説明しましょう。 *本記事は、『富士山噴火と南海トラフ』から、内容を再構成してお届けします。 *好評の“いま富士山が噴火したら、なにが起こるのか”で、これまで取り上げた災害については、記事末尾の【関連記事】からご覧いただけます。
猛烈なスピードと高温で襲ってくる「火砕流」
火山が爆発的な噴火を起こしたときに、しばしば「火砕流」が発生する。火砕流とは、マグマの破片やガス、石片などさまざまな物質が一団となって流れる現象であり、ドロドロと流れる溶岩流とは違い、モクモクと、煙のような見かけをしている。 だが、実際は決して見た目のように悠長なものではない。火口から噴き出した火砕流は、あたかも原子爆弾のキノコ雲が地表を横に這っていくように、猛烈なスピードで移動する。その速さは時速100キロメートルを上回る。 そして、火砕流の温度は一般に、摂氏500度を超す。そのため、夜間に遠くから見ると赤く光りながら流れ落ちるのがわかる。これは雲仙普賢岳で1991年から約4年間にわたり発生した火砕流でも観察された。 すなわち火砕流は、高速で高温のきわめて危険な流れであり、通過した地域をすべて焼失し壊滅させてしまうのである。当然、富士山噴火の際にも甚大な被害が予想されるこの現象、まずは「火砕流とは何なのか」、その正体について検討していこう。