“香る”百貨店、新たな成長の原動力に 体験価値を磨き上顧客との関係も深化【25年百貨店化粧品展望】
2024年の全国百貨店の化粧品売り場は軒並み高い伸びを見せた。各店で国内客を逃さない施策と訪日客の取り込みの両輪がうまく回っている。しかし消費者の購買チャネルが多様化するいま、百貨店ならではの体験型のサービスや高揚感のある売り場作りが課題となりそうだ。(この記事は「WWDJAPAN」2024年12月30日&25年1月6日合併号からの抜粋です)
Topics 14
百貨店化粧品 記者はこう見る 新関瑠里/編集部記者
2024年、印象に残った取材
今年は全国の小売店の取材に駆け回り、明るい話が多かった反面、地方百貨店の苦境を実感した1年でもあった。生まれ育った長野県松本市でも25年春に老舗の井上百貨店が閉店する。最終日には現地の様子をレポートしたい。
2025年はこんな取材がしたい
化粧品売り場のキーマンとなる人物の人となりを掘り下げたインタビュー集を企画したい。目指すは43人!そして元気な売り場が増えるように、多方面から役に立つコンテンツも充実させたい。
フレグランス催事が活況
2025年は各店で売り場の再構築が進む
百貨店の化粧品売り場は、全国的に堅調な伸びを見せた。価格改定による駆け込み需要に加え、円安の割安感が訪日客の購買意欲を押し上げた。また、ポップアップイベントや催事の強化、体験価値を高める独自の取り組みが結実。顧客層の拡大に寄与した。
特に目立つのがフレグランスカテゴリーの成長だ。コロナ禍を経て拡大したフレグランスは、今や百貨店化粧品売り場の主力として際立った存在感を示している。2024年は全国各地でフレグランス関連イベントが相次ぎ開催された1年でもあった。春は伊勢丹新宿本店、ジェイアール名古屋タカシマヤ、阪急うめだ本店(初)、大丸東京店(初)で行われ、いずれも盛り上がりを見せた。中でも、三越伊勢丹グループが秋に開催した国内最大規模の香りの祭典「サロン ド パルファン」では、全体で前年比10%増の売り上げを記録。その約3割は、23年にスタートした会員制の香水コミュニティー「パルファン」の影響によるものだった。同コミュニティーの成長が顕著で、新規入会者も増加しているという。