“香る”百貨店、新たな成長の原動力に 体験価値を磨き上顧客との関係も深化【25年百貨店化粧品展望】
振り返っておきたいニュース3選 専門家はこう見る 弓気田みずほ/ユジェット代表・美容コーディネーター PROFILE:(ゆげた・みずほ)伊勢丹新宿本店化粧品バイヤーを経て独立。化粧品ブランドのショップ運営やプロモーション、顧客育成などのコンサルティングを行う。企業セミナーや講演も。メディアでは化粧品選びの指南役として幅広く活動中 問われる化粧品フロアの“存在意義”
ブランドと共にアップデートを
化粧品フロアは、昔も今も百貨店にとって欠かせない存在だ。2024年に大規模改装に入った西武池袋本店や小田急百貨店など、百貨店としてのフロアを大幅に縮小する店舗であっても、化粧品はプレステージブランド・食品と並んで強化カテゴリーに残り続けている。かつて化粧品フロアの役割は「比較的手に取りやすい価格のため『ついで買い』につながる」「カウンセリングを通じてブランド・店舗の顧客化が期待できる」というものだったが、その役割は大きく変化している。
今の百貨店は自主買い付けの平場を減らし、テナントショップの集積でフロアを構成することで高効率化を図っている。化粧品フロアはもともとそれに近い運営がなされており、相応の広いフロア面積を少ない自社人員で運営してきた。さらに近年では新進ブランドのポップアップイベントを通じて、一種の「集客装置」としての役割も担うようになった。ECを軸に展開する新進ブランドが増える中、百貨店でタッチポイントをもちたいというブランドは多い。
しかし販売スタッフの人件費や設営費用、さらに百貨店への売り上げ分配を含めると、実際の利益は見込めないどころかかえって赤字のケースもある。さらに常設カウンターを構える大手ブランドの負担も大きい。先行発売・店舗限定品の企画や催事へのタイアップなどさまざまなコストがかかり、ブランド側もかなり疲弊している。
ビューティに関する情報が氾濫する中、百貨店はSNSやメディアで知った商品を見に行くだけの場所になってしまっている。新しいブランドやアイテムを探すという体験価値や品ぞろえの多さに関しては、百貨店ブランドもそろうアットコスメストアの方がよほど充実している。百貨店のカウンターは、溢れる情報から自分に必要なものを選べる場所であってほしい。ブランドの顔並びは同じようでも、百貨店それぞれの顧客層やターゲットによって求められるサービスは異なるはずだ。