“香る”百貨店、新たな成長の原動力に 体験価値を磨き上顧客との関係も深化【25年百貨店化粧品展望】
常設売り場でもフレグランスの拡充が進み、多角的に需要を取り込んでいる。4万~5万円の高価格帯商品が動くなど客単価の上昇も見られる。25年もフレグランス市場の盛り上がりが続くと予測されるが、競争が激化する中で、各社の戦略が問われる局面に差しかかっている。影響力の強いフレグランスのファンコミュニティーは年々熱を帯び、希少価値の高い香りや“自分だけの香り”を求める傾向が高まっている。今後より一層、バイヤーのセンスが光る、特別感を醸成するラインアップや未上陸ブランドを活用した企画、個に寄り添った体験型イベントが求められるだろう。
訪日客の購買行動にも変化が見られる。カウンセリングニーズが高まり、高価格帯商品が人気だが、夏に円安の恩恵が薄れたため、コストパフォーマンスを重視した購買行動へのシフトも進んでいる。売り場はコロナ禍前のようなにぎわいを見せているが、各店では混雑を緩和するために国内客を逃さない施策を強化している。例えば、松屋銀座本店では、中・上位顧客との関係構築を目的に全ブランド共有のキャビンを別館に設置。渋谷ヒカリエシンクスでは、23年秋に「東急百貨店 お得意様サロン」を新設し、これが自社カード会員の売り上げ増加と顧客の定着化を促進している。富裕層や優良顧客との関係強化に向けた取り組みは今後さらに活発化する見込みだ。
24年の百貨店化粧品市場は業界全体でポジティブな動きが鮮明になり、ピーク時の19年売上高5713億円に近づきつつある。この追い風は、25年以降も続くとの見方が広がっている。その中で、業界の注目を一身に集めるのが西武池袋本店の全面改装開業だ。「日本の百貨店で最大級のコスメフロア」を掲げ、大胆なスケール感と新たな取り組みを進めている。この動きは、百貨店化粧品の可能性を拡大し、業界全体に新たな刺激をもたらすと期待が募る。これに続き、他店でも売り場の再構築が進みそうだ。
百貨店のビューティ関連を読み解く上で