2歳からの言葉がけで「数学力」が伸びる?子どもが生まれつきもっているチカラを引き出すための親の言葉がけ【算数を楽しむプロ 植野義明先生に訊く】
幼児から大人まですべての人に開かれた数学教室を主宰
――先生の主宰されている「くにたち数学クラブ」では、どのようなことを行っているのでしょうか。 幼児から大人まで年齢に応じたクラスがあり、計算や図形、統計など数学のいろいろな分野から毎月テーマを決めて取り組んでいます。内容はさまざまで、幼児では絵を描くことも想像力につながりますし、工作もします。 工作では、まず何を作りたいか考え、作り方の展開図を考えるために数学が必要です。たとえば小学校5、 6年生のクラスではお皿を作るという課題に取り組むのですが、お皿の周りの部分の角度は何度にしたらいいか、サインやコサインを使わずに分度器だけで考えていくというようなことをやっています。 決まったやり方で機械的に解ける問題でも、小学生の段階ではまだまだ子どもにしかない直感力があるので、何も手がかりのないところから試行錯誤して作り上げていくことを大切にしています。 また、幼児クラスでは、数学につながる想像力や表現力を育てるために物語を取り入れています。ペンギンたちが問題を解決しながら冒険するという、くにたち数学クラブで作ったオリジナルの物語を語り聞かせています。 先日から、幼児期のお子さんを持つお父さんお母さんに向けの講座を始めました。これはくにたち数学クラブでやっていることをご家庭の中でできるように、実際の教え方をデモンストレーションするものです。この講座により、遠くて通えないというご家庭でも、オンラインで学んでいただけるようになりました。
親は環境を整えてあげるだけで良い
――数学を好きな子になってほしいと思う親御さんも多いと思いますが、数学好きな子に共通点はありますか? 教室に来ている子を見ていると、数学に生き生きと取り組んでいる子には一つの共通する特徴があります。それは「探究心に突き動かされている」ということです。親にやれと言われたからとか、宿題だからではなく、自分自身の探究心に突き動かされていなければ上達はしません。 人間は生まれつき、数学をおもしろいと感じられる気持ちを持っています。親御さんは教えるのではなくて、「子どもがもともと知ってる感覚を呼び覚ます」ような環境を、整えてあげるだけで良いと思いますよ。 ◾️ 子どもの「数学力」が自然に育つ2歳からの言葉がけ 作・植野義明日本実業出版社1,500(税別) 数学の力は、小さい頃からの興味のもたせ方で大きく変わります。大切なのは幼少時に、ちょっとした言葉がけをしながら、遊びやゲームなどを通して数学的な考え方、思考のしかたの「芽」を育てておくこと。この本では2~6歳の時にやっておきたい、話しかけ方を紹介しています。 ◾️お話を聞いたのは 植野義明|くにたち数学クラブ代表 東京大学非常勤講師、日本数学会会員、数学教育学会代議員。東京大学理学部数学科卒、東京大学大学院で数学を専攻、理学博士。1986年より東京工芸大学講師、准教授。2021年4月、定年退職と同時に国立市で3歳から100歳までの人たちが数学の美しさに触れ、数学で遊び、数学が好きになれる場所として「くにたち数学クラブ」を設立、代表。 著書に『考えたくなる数学』(総合法令出版)、『子どもの「数学力」が自然に育つ2歳からの言葉がけ』(日本実業出版社)がある。
取材・文/酒井千佳 構成/HugKum編集