2歳からの言葉がけで「数学力」が伸びる?子どもが生まれつきもっているチカラを引き出すための親の言葉がけ【算数を楽しむプロ 植野義明先生に訊く】
正解を教えることだけが良いわけではない
――子どもの考えに対してどのように答えればよいでしょうか。 よくないのは「これが答えだよ!知らなかったの?」という対応です。これを続けていると、子どもは誰かが正解を教えてくれると思ってしまいます。 「どうしてだろうね。今度誰かに聞いてみようか。」と答えてみるのもいいですね。誰かに聞くと1人ひとり意見が違うということもわかるし、大人でもわからないことがあるんだということを肌で感じられます。 ――子どもが間違ったことを言った時はどう対応すればよいでしょうか。 「予想してごらん」といった時に子どもが違うことを言うと、大人は知識があるので「それは違う」と言いたくなります。でも、もしかしたら間違ってるけれどいいアイディアを含んでいるかもしれません。予想は間違っていても、むしろ間違っている時の方が後で役に立つこともあります。 予想を躊躇せずに言えるようになってほしいので、「それは間違っている」と頭ごなしに言うのではなくて、「なるほど、そういう考え方もあるね」「それももしかしたら一理あるかもしれないね」と答えた上で、「こういう意見があるよ」と伝えてみてください。 ――言葉がけをするときに親が気をつけることはありますか。 「さあ言葉がけするぞ!」と構えないでください。教えようと考えてしまうと上手くいかないと思います。普段の生活の中で子どもを一人の独立した人間として認めてあげることから始めてみてください。対等な人間としてお互いにいろんなことを発見し、それをシェアして互いに共感することが大切だと思います。
苦手意識を持ってしまった小学生でも間に合います
――小さい頃に働きかけができなかった小学生くらいのお子さんはどうすればよいでしょうか。 幼少期に数学力を十分に伸ばせなかった子どもは、「○年生だからこれをやらなければならない」といった学年ごとの単元にはとらわれず、基礎から訓練することが大切です。幼稚園の時にこれをやっておけば良かったということがあれば、今からやっても遅くはありません。子どもは柔軟性がありますので訓練すれば時間はかかってもできるようになります。 ――算数の成績が良くなかったり、すでに苦手意識を持ってしまったりしている小学生でも伸ばせるのでしょうか。 そもそも学校のテストというものは、先生がきちんと教えられたかどうか、教えたことが生徒に定着しているかをチェックするためのもの。テストの結果は先生が反省するための材料というのが主な目的なのです。ですから、テストの点が悪かったからといって気にする必要はない、というのが私の考えです。テストで測れない能力はたくさんあるので、テストの点数でやきもきするのは心のエネルギーの無駄。それよりも子どもが「数学を理解できている感覚」や、「点数にはならないけれども持っている能力」があることが大事です。 苦手意識は「学校教育のものさしによって社会的に押し付けられた理不尽なもの」という面もあります。数学とは個人的な体験であり、発達させていく楽しさも個人個人のものなので、他人の目に左右されないように周りの大人が子どもを守ってあげることが重要だと思います。 そのためには、自分の子を兄弟や友達など周りの子と比較しないことと、先を急がないことです。「できたから次にいこう」「もうちょっとできるんじゃない?」といった欲を出さないで、しっかり理解できるまで充分時間をかけることが大切です。 ――ちなみに、先生はいつから数学がお好きだったんでしょうか? 小学生の頃から好きでしたね。小学校2年生の時、繰り下がりの引き算でつまづいてしまった私は、母に質問をしました。すると、学校では習わない別の計算方法を教えてくれ、試してみるとスイスイ解けたんです。その計算方法がなぜ成り立つのか、1年かけて考え続けたのを覚えています。 小学校4年生ぐらいの頃には数学者になりたいと思っていたのですが、周囲からは将来性がないと言われ子どもながらに悩みました。でも、古代ギリシャの数学者ターレスの伝記を読み、「数学者も社会の役に立つ重要な仕事だ、数学を作り出す人になりたい!」と自信を持ちました。