がんになっても安心して働ける社会を―「ネクストリボン2024」3年ぶりリアル開催
◇イベントダイジェスト【1】
がんになっても安心して働き、暮らすことができる社会、誰もががんを自分の問題ととらえて早期発見のために検診を受けることが当たり前の社会を目指すイベント「ネクストリボン2024~がんとの共生社会を目指して~」(主催:日本対がん協会、朝日新聞社▽支援:メディカルノート)が2月4日の世界対がんデーに合わせて開催された。新型コロナウイルス感染症の影響でオンライン開催が続いていたが、今回は3年ぶりのリアル開催。約360人が会場の浜離宮朝日ホール(東京都中央区築地)に詰めかけ、がんとの共生に対する関心の高さを伺わせた。医療関係者、歌手でタレントの堀ちえみさんなどのがんサバイバー、企業関係者ら多彩なゲストが登壇し、がんと共に生きる社会をどう作っていくかなどについて話し合った。2部構成4.5時間にわたるイベントをダイジェストでお届けする。(全4記事の1)
◇第1部 基調講演「がんは『治る』、『治らない』の二者択一ではない。がんを知ろう」
第1部の冒頭、大野真司さん(社会医療法人博愛会相良病院院長)が基調講演で、職場のスタッフががんになったときにどう接するべきか、支援のポイントなどについて解説した。 ◇ ◇ ◇ 就業年齢が伸びているなか、69歳まで働くとすると5人に1人、59歳までならば10人に1人が退職までにがんになる。ある日、職場のスタッフから「がんと診断された。治療のため入院が必要」などと相談されることがあるかもしれない。必要なことは ・日ごろから備えておく ・正しく知っておく ・コミュニケーション力を身につけておく ――ことだ。組織として準備し、あらかじめ想定しておくことが大事だ。 仮にがんが再発したとしても、ほぼ全員が仕事を継続できる。再発した場合、治療の中心は薬物療法になることが多いが、仕事に支障が出るのはごく一時期。それ以外の時期は普段と変わらず、生活や社会における役割などを考えて働き続けられるとよいだろう。がんになった人が職場に報告する際、伝える相手として一番多いのは所属長(94%)だ。では部下から「がんになった」と言われたとき、上司はどのような姿勢で話を聞けばよいのか。 ・ひたすら傾聴し、真剣に話を聴いていることを相手に示す ・沈黙と非言語的対話を忘れないようにする ・早すぎるアドバイスを慎む ――のが、上手に聴くコツだ。 さらに、がんになった従業員支援の注意点として、 ・本人の意図に反してがんであることや本人の状況を他者に知られないよう、個人情報の取り扱いに注意する ・本人の同意なしに職務配置や職位、勤務形態を変更しない ・主治医、産業保健スタッフとの面談などから本人の病状について情報を得る ・業務をカバーする同僚に配慮する ――といったことが挙げられる。 また、がんになった人が治療と仕事を両立するために求められる支援としては、 ・柔軟な働き方 ・両立しやすい職場の雰囲気 ・治療に関する支援制度の充実 ――などだ。 スタッフががんになってから考える、ではなく、早めに制度をつくり、がんのことをよく知っておき、コミュニケーションを取ることが大切だ。 病気になった人が元気になるために必要なことは「希望」だ。最後に瀬戸内寂聴さんの言葉を紹介する。 「希望はつらいこと、苦しいことに打ち勝つ力なのです」