がんになっても安心して働ける社会を―「ネクストリボン2024」3年ぶりリアル開催
服部文さん(一般社団法人仕事と治療の両立支援ネット―ブリッジ代表理事)
医療従事者は、患者がどのような仕事、働き方をしているか分からない。一方、患者が働く企業は、従業員がどのような病気・治療をし、どういった働きにくさを抱えているか分からない。ブリッジの役割はこの両者をつなぐこと。医療と労働をつなぐだけでなく、回復して日常生活を送れるようになったその先、社会の中で働くうえで必要になるかもしれない、弁護士やリハビリセンターなどのリソースと患者をつなぐことで支援している。 がん患者の就労支援が制度化されている企業も増えている。ところが、親会社にそうした制度があっても、支社レベルでは所長から「戻ってくると1人分のノルマが増えるので、体調が完全に戻るまで復職しないでほしい」との相談もあった。大事なのは制度を作ることではなく、どのように運用するかだ。属人的な非合理性に打ち消されないよう、全国津々浦々まで理解と運用を徹底してもらいたい。 がん患者の立場からは、▽復職して抗がん薬治療を続けながら働いていたところ、半年ほどたったころ上司から呼び出され「周りのフォローも限界なのでそろそろ普通に働いてほしい」と言われて、退職せざるを得なくなった▽人事担当者は職務内容を配慮すると言ったが現場に伝わらず、怠け者扱いされないよう頑張った結果リンパ浮腫を発症した――など、職場の理解が得られなかったという声が寄せられている。 がん患者の復職はゴールではなく、新しい体調を抱えて働き始める新たなスタート。だからこそ周囲との密なコミュニケーションが大切だ。両立支援は医療機関だけでできるものではない。企業と社会がニーズをしっかり受け止め、患者が社会に参画できることが重要だ。 「両立支援は社会的包摂の話だと思う。医療が高度化した新しい社会でがんと共に生きる人が増えるなか、どのような社会を望むのか、共に考え、形作っていく必要がある」と、目指すべき社会の在り方を示した。 ネクストリボン2024 主催:公益財団法人日本対がん協会、株式会社朝日新聞社 後援:厚生労働省、経済産業省 特別協賛:アフラック生命保険株式会社 協力:日本イーライリリー株式会社、大鵬薬品工業株式会社、株式会社ルネサンス 支援:株式会社メディカルノート
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