<木材の価値は何で決まる?>「節」「木目」はどうしてできるか、枝打は多様な目的もつもコスパの悪い作業
枝打の実際
国有林でも一部の優良なヒノキ林を高品質材生産林に設定して、無節の心持ち柱材を目的とした枝打が行われていたが、予算不足で実行できないことも多かった。 心持ち柱に節が出ないようにするには、幹がビール瓶の太さになったときに生き枝を打つ。それより早いと木の成長を阻害するし、遅いと節が出る。過剰投資とならないように、 林の中から通直で枝の細い木を選んで行うことが肝要だ。形質のよいものを選木して主伐時まで残すのである。 小ぶりな枝打用の鉈(なた)で枝の付け根を少しえぐるように打つのが名人で、打ち跡の巻き込みが早い。しかし、素人がやると深く打ちすぎて逆に傷となったりするので、手鋸で切断するのが無難である。ところが鉈でやると、ボタン材といわれる材の変色を起こすことが多いといわれており、どの道具を使えばよいのか悩ましい。 無節柱を得るためには、根元から最低3mの高さまで枝打が必要である。6mの通し柱の無節材は将来の需要が多いとは思えないので、やるとなれば賭けである。 適期は樹木の成長休止期である秋から冬である。傾斜のきつい林内を重い梯子をもって移動しなければならないので、相当の重労働であり、能率はあがらない。ツリーモンキーと呼ばれるエンジンで動く自動枝打機があって、手錠のように樹幹にはめると自動的に木登りしながら、枝に当たると小型チェーンソーで枝を切り落とす。すぐれものであるが、これも重くて移動に2人がかりである。 かつて森林官が現場で行った研究で、ふつうは10年目にやる除伐を我慢して、造林木と競合させ、造林木の下枝の枯れ上がりを促そうというものがあった。なかなかいい発想だと思った。結果は、ある程度造林木の枝張りを抑制したようである。 国有林の立木販売によく参加する素材生産業者は、広葉樹と混交したいわゆる不成績な造林地で役物がよく採れると言っていたことを思い出す。同じことを熊本でも青森でも聞いたから、普遍的な経験則なのであろう。 昔の森林官は、実践的な研究に取り組めた。これも国有林というフィールドと進取の気風があったからこそ、さらには独立採算制下のハングリー精神があればこそ可能なことだった。