「西欧では一般的」というが…歌舞伎町タワーの「オールジェンダートイレ」が炎上してしまった「納得の理由」
居酒屋などの飲食店に1つだけ設置されているような男女共用トイレには、女性だけでなく男性も不安感を抱いている実情を、前編記事『「性犯罪のリスクを客にどうしろと?」「女性専用と比べて汚すぎる」「実は男性客も不安」…炎上収まらぬ「男女共用トイレ問題」の本質』で紹介した。 【マンガ】追いつめられた女性が「メンズエステ」の世界で味わった「壮絶体験」 近年、LGBTの考え方が広まるにつれて、性別に関わらず誰でも使用できる「オールジェンダートイレ」の普及が進んできたが、率先して取り入れた新宿・東急歌舞伎町タワーに多くの批判が寄せられたのも、こうした背景があるからだろう。歌舞伎町タワーではSDGsの「誰ひとり取り残さない」という理念の実現を目指して、オールジェンダートイレを設置していたが、抗議が殺到し、オープンからわずか4ヵ月後に廃止されてしまった。
男女別の概念がない国もある
トイレ研究家で、世界トイレ協会理事でもある白倉正子さんは、その経緯をこう説明する。 「日本における『オールジェンダートイレ』の初の実験場のような存在になってしまったのが、まさに歌舞伎町タワーの事例でした。ただ、お客さんの大半がインバウンドの外国人と考えると自然な成り行きだったと思います。むしろあそこで男女別トイレを作っていたら、日本は遅れているという批判もあり得た。 というのも、アメリカのニューヨーク州ではトイレの男女共用化を法律で義務付けています。また、スウェーデンやノルウェーなどの北欧諸国では男女共用が一般的で、男女別の概念がほぼありません。ただ現時点では、日本では受け入れることが難しいことを認識する機会になりましたね」
女性の選択肢を奪ってしまった
オールジェンダートイレについて研究する大阪大学トイレ研究会のメンバーは、歌舞伎町タワーの設計上の問題を指摘する。 「歌舞伎町タワーでは、手洗い場が個室の外で、男女が一緒になる作りなのが特にまずかったように思います。また、男女別トイレが設置されていませんでした。最近できた大阪大学・新箕面キャンパスにあるオールジェンダートイレは、手洗いも含めて、個室の中で全て完結するようになっています。また、男女別トイレもそれぞれ設置されていて、利用者の判断で選べるようになっている。 “オールジェンダー”という選択肢を新たに作ったのは良いのですが、『男性と同じトイレを使うのが怖い』という女性に対しては、かえって選択肢を奪う形になってしまったのが問題だったように思います」 そもそも、近代以前までトイレは男女共用が当然であった。女性の社会進出が当たり前でない時代には、女性用トイレの存在は必要なかったからだ。 男女別トイレが社会に根付き始めたのは1800年代後半頃。男性と女性が別々のトイレを使用することを義務付ける世界初の規制が、1887年にマサチューセッツ州で可決された。だが、その経緯としては、男女平等のためというよりは「公共領域において、か弱い女性を保護する目的のため」に採用されたという。