終電時刻が137分繰り上げの路線も…コロナ禍で終電の繰り上げが起きた「2つの理由」
繰り上げ理由は線路保守作業員の不足
こうした終電の繰り上げには、大きく2つの理由がある。 1つは深夜時間帯の利用客の減少だ。「JR東日本ニュース」(2020年9月3日)は、山手線(上野―御徒町駅)で午前0時台の乗客がコロナ禍の影響で66%減になったとしており、テレワークや外出自粛が追い打ちをかけたことは事実である。 だが、深夜帯の乗客に関して言えば、団塊世代の定年退職や働き方改革で「コロナ前」から減少傾向にあった。感染収束後も需要は先細りしていくと判断したのだ。 もう1つの理由は、線路保守作業員の不足だ。むしろこちらのほうが、終電時刻の繰り上げを決断するに至った主たる理由のようである。 線路保守作業は終電から始発までの深夜中心となるため、働き手が集まりにくく作業員は休日を取りにくい。JR東日本によれば、線路保守作業員は過去10年で約2割減少し、今後10年でさらに1~2割の減少が見込まれるという。終電時刻を繰り上げることで1日当たりの作業時間を増やすことができれば、休日を取りやすい職場環境を用意できる。結果として、新規採用にも好循環をもたらすという思惑がある。 乗客の減少傾向にせよ、線路保守作業員の不足にせよ、その根本には少子高齢化に伴う人口減少がある。感染の拡大がなかったとしてもいつかは踏み切っていたことだろう。 つづく「日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える「衝撃の未来」」では、多くの人がまだまだ知らない「人口減少」がもたらす大きな影響を掘り下げる。
河合 雅司(作家・ジャーナリスト)