なぜ井上尚弥は一夜明け会見で2022年4団体統一&4階級制覇構想と偽らざる心境を激白したのか…「ゾーンに入れなかった」
実は、筆者は、今回の試合直前に大橋ジムから送られてきた最終調整の写真を見て愕然となった。頬はこけ生気が抜けたような表情に過酷な減量が見てとれた。減量の影響が足にきたのか、ディパエン戦では2度ほどインターバルでイスに座らず立っていた。 もうバンタム級での戦いは限界に来ている。井上は減量の苦しさを滅多に口にしないが、本当のところを確かめておきたかった。 減量は厳しいのか? 「楽ではない。どんどんきつくはなっている」 そう吐露した井上は。バンタム級での戦いが、2018年にWBA世界同級王者だったジェイミー・マクドネル(英国)を1回で沈めて以来、4年、7試合に至っていることを知らされると「わりとやってるな」と呟き、本音を明かした。 「本当だったらですよ。きのう4団体(統一戦)だったんですよ。それで来年スーパーバンタムだったんです」 当初、8月にWBC王者のドネアとWBO王者のカシメロが2団体統一戦を行い、その勝者と12月に日本で4つのベルトをかけて統一戦が行われる予定だったのだ。だが、カシメロがドネアの要求した任意のドーピング検査に期限内に応じず、おまけにSNSでの誹謗中傷を行ったことで試合が流れて構想は白紙となった。 「8月に2人がやって12月で(バンタムの戦いは)終わっていたんです。いいかげんにしてくれと(笑)」 結果、スーパーバンタム級への転級が1年遅れ、井上は苦しい減量との戦いを続けなければならなくなった。 大橋会長は、今後の展開について「ドネアが最有力。カシメロに対してWBOがどういう措置を取るのかに注目して、この2人とやることになる。もし実現できない場合はスーパーバンタム(への転級)を考えている」と明言している。 ドネアに敏腕プロモーターとして知られる新興プロモート会社「プロベルム」のリチャード・シェーファー氏がついているため、駆け引きもあり、うかつに井上陣営が、狙いを表に出せないという事情もある。 井上も、「自分の望む試合はファンも望む。ファンが望む試合なら自分も納得する」と発言するに留めたが、内に秘めた構想をこう明かしたのだ。 「スーパーバンタム級は、来年の暮れ。春、夏は自分の中ではバンタムでやる覚悟はある」 春と夏のバンタム級の2試合は、WBC王者のドネアとカシメロが条件付きで保持しているWBOのベルトがターゲットになる。カシメロの王座の行方は流動的だが、井上は、4団体統一の夢はあきらめておらず、それを果たせば、1年後の年末に、いよいよひとつ階級を上げて4階級制覇への挑戦が待ち受ける。 井上は、「この前にフィゲロアとフルトンの試合(WBC、WBOの王座統一戦でフルトンが判定勝利)を初めてみたくらい」と、スーパーバンタム級への本格準備は、まだ始めていないが、真吾トレーナーは、4階級制覇に手応えを感じとっている。 「上げるタイミングは尚次第。フィジカルはより必要だが、スーパーバンタムでも尚のパンチが当たればダメージがある。階級が上がると向こうも持ちこたえるのが強くなる。そういう(スーパーバンタム級を想定する)意味でもディパエン戦は良かったのかも」 2022年も世界のボクシング界は井上を中心に回るだろう。井上は「ダメージはない。年内、正月の三が日くらいはゆっくりしてからロードワークは早々に開始しようと思っている」という。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)