麻布が、とうとう渋渋・駒東に追い抜かれ…いま中学受験「男子御三家」で起きている「下剋上」の深層
神奈川の動向も大きく影響
偏差値の上昇につれて優秀な生徒がどんどん入学し、東大合格者が増えてきた結果、その数字に魅かれた男子が渋渋を志望するという、好循環が生まれつつあるのだろう。 都内における私立中学の受験者数の増減は、近隣県からの通学者や併願校にも左右されている。とりわけ神奈川の聖光学院、千葉の渋谷教育学園幕張などの東大合格者数が伸びている影響は見逃せない。 前出の森上氏は、その中でも「神奈川の動向が麻布の受験者数を左右する要因として非常に大きい」と話す。 「最上位層が厚いサピックスの横浜校の近年の傾向として、これまで麻布を目指す受験生も多かった。しかし、いまの上位層の第一志望は麻布ではありません。神奈川県内には面倒見に定評があって実績十分の聖光がありますし、少数精鋭の栄光学園の人気も相変わらず高い。 神奈川の優秀な子たちは東京まで通わなくてもよくなった。わざわざ多摩川を越えて長時間かけて東京まで通学するなら、麻布より開成のほうがいいというわけです。 神奈川からは例年100人くらいが麻布に進学してきましたが、開成にだいぶ取られてしまい、麻布にとっては厳しいのが現状」(前出の森上氏)
来年どれぐらい東大に受かる?
東大合格者が男子の中学受験者数に影響大となれば、来年3月の結果次第で麻布人気が復活してもおかしくないはずだ。しかし前出の進学塾講師は、「そんなに簡単な話ではない」と眉をひそめる。 「大方の予想として、『今年減っただけ』『浪人組が頑張って来年また戻るだろう』と言われていますが、私は懐疑的です。というのも、模試の結果等を見たとき、じつは東大を受験して合格できるような学力の高い生徒がそれほどでもないんです。代わりに増えそうなのは一橋大学、東京科学大、早慶などですね」 東大の合格者数、医学部への進学者数、海外大学を含む選択の広さと可能性――これらの実績がさらなる優秀な生徒集めに直結し、学校の偏差値を上げていく――そんな熾烈な競争が繰り広げられている状況の中で、これから「御三家」はどう変わっていくのだろうか。 前出の森上氏による見立てはこうだ。 「開成は圧倒的な人気です。みなさんの関心事としては今後、麻布がどうなっていくか、ではないでしょうか。ただ、麻布の場合130年近い歴史があり、伝統の力は非常に大きい。いい事例が武蔵です。 一旦は人気が堕ちましたが、伝統もあり、OBや学校自体のファンもいます。それによって徐々に人気も回復傾向にあるんです。麻布も同様です。あの自由な校風は、OBに相当根強いファンがいます。卒業生に支えられて踏みとどまっていくことになると思います」