ドイツ激震、VW工場閉鎖は「氷山の一角」-工業力衰退の象徴に
VWの失速は、時代に乗り遅れた企業を巡る警告であり、ドイツの成功モデルに潜んでいた陥穽(かんせい)だ。欧州経済の原動力となってきたドイツが、今後も欧州をリードし続けることができるのか疑問に疑問が投げかけられている。
INGのマクロ部門責任者カルステン・ブルゼスキ氏は「VWの問題は誤った経営判断による自業自得という側面もあるが、VWはビジネス拠点としてのドイツが直面している難題の一例を突き付けている」と指摘。
「ドイツは長年にわたり競争力を失い続けており、これがかつての独経済の至宝、VWにも影響を及ぼしている」と述べた。
VWは昨年、東部の中規模都市ツウィッカウでフルEV24万7000台と、「ランボルギーニ」と「ベントレー」向けに1万2000の車体を生産したが、工場閉鎖の可能性が浮上する前から、コスト削減がすでに進んでいた。
EVが依然として高価でEV購入を促す奨励策が縮小されつつあり、欧州でのEVの普及がなかなか進まないという状況にツウィッカウ工場は全面的にさらされている。
今もまだかなりの利益を上げているVWだが、当初はディーゼルエンジンに固執。その後、本格的なEV攻勢を狙ったが、事業シフトの道のりは困難を極めている。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)のエコノミスト、マーティン・アデマー氏は「ドイツ経済における自動車産業の重要性は近年低下しているが、引き続き非常に重要なセクターであることに変わりはない」と語った。
相次ぐ危機
自動車はドイツでは現代的アイデンティティーの不可欠な部分であり、政治的な避雷針だ。実際、VWの物語は、戦後復興を果たしたドイツそのものを語っており、困難を乗り越えて成長し、戦火で荒廃した国土を欧州一の工業大国に変貌させた戦後の奇跡に直結している。
VWは21世紀に入ると、中国市場で中間所得者層(ミドルクラス)の需要掘り起こしに成功。低迷にあえぐ米自動車メーカー各社と一線を画すことができた。しかしその後、アジアの消費者頼みが問題となった。