5年に1度の財政検証で判明! 誤解だらけの「年金」
――え~、でも世代間格差は大きくないですか? 今の現役世代では、保険料の支払総額が給付を上回る「払い損」になるとも聞きますし。 高橋 それもよくある誤解です。時代の変化を勘案すると、後の世代が明らかに不利とはいえませんし、そもそも払い損にはなりません。 少し前のデータですが、14年の財政検証によると、現在29歳(95年生まれ)の人でも、60歳時点での平均余命まで生きた場合に受け取れる年金給付額は、負担する厚生年金保険料の2倍以上となっています(図表3)。 ――ホントだ! 高橋 確かに給付と負担の倍率は世代が後になるほど小さくなっています。ただし給付が多い前の世代では、現役時代に親に仕送りをしていた人が多かったことを忘れてはいけません。つまり今の現役世代では、公的年金が親の扶養を肩代わりしてくれているというのが実情なのです。この点は紛れもなく、後続世代が受けているメリットでしょう。 ■老後資金2000万円問題の真相 ――給付については納得できました。あと気になるのは、納め方について。少なくなっていく現役世代からお金を集めて、増えていく高齢者に配る「賦課方式」を採用していますけど、おのおのが保険料を積み立てて、後で受給する「積み立て方式」のほうが少子高齢化の悪影響を受けず、公平なのでは? 高橋 積み立て方式なら少子高齢化の影響を受けないというのもよくある誤解です。というのも、保険料を将来の自分たちのために積み立てていったところで、いざ受給するとなったときにその金額がどれだけの価値を持つかは、結局少子高齢化の影響を受けるからです。 ――なんでですか? 高橋 少子高齢化が今後も進んでいくと働く人が減るので、日本全体での供給力が減少しますよね。その一方で、働く人に対する消費者の割合は大きくなっていきますから、供給が需要に追いつかなくなる。つまり物価が上がります。 そうして高齢者が利用する物やサービスの価格が上がっていたら、積み立てて運用したお金を受給したところで、その実質的な価値、つまり購買力が維持されるのかは保証されません。 ――生活保障として当てになるかどうかが、もらうときになるまでわからないということですか。 高橋 そうなんです。なので、このような点に加えて、運用のリスクもある積み立て方式より、少子高齢化をはじめとする社会の変化を組み込んで、保険料の納付と給付を全体で調整できる賦課方式のほうが、年金が生活を保障するパワーを安定して確保できます。世界の先進国は軒並み賦課方式を採用していますから、これは年金運営の常識です。