5年に1度の財政検証で判明! 誤解だらけの「年金」
――なるほど。その前提に立てば、現役世代の賃金上昇に応じて所得代替率は下がるけれども、年金給付額の購買力(商品やサービスを買う資力)はある程度維持されるんですね。 ■世界から絶賛される日本の年金 ――今回の財政検証を通して、思いのほか年金が頼りになることはわかりました。とはいえ、不安な点はまだまだあります。 そもそも、現役世代の人口はこれからも減っていきますよね。その中で政府が年金制度を維持できるという根拠は? 高橋 昔から高齢者ひとりを支える現役世代が減っていくという話は出ていて、すでに現役労働者ふたりで高齢者ひとりを支える段階になっています。イメージとしては苦しいと思えるでしょうが、実際には将来の人口動態を織り込んでも100年後まで年金給付を継続できる見込みです。 ――え、ホントですか? 高橋 はい。この背景には、将来的には現役世代と高齢者の比率が一定に収束していくことがあります。人口ピラミッド上でコブのように膨れている団塊世代と団塊ジュニア世代が抜けるまでは高齢者の比率は高止まりしますが、そこを過ぎれば保険料収入と給付の関係は安定します(図表2)。 ――そうなんだ。でも、団塊ジュニアが抜ける前に積立金がなくなってしまうのでは? 高橋 いえ、積立金の枯渇を心配するのは取り越し苦労に過ぎません。 ――そうなの!? 高橋 まず、積立金は約5年分の給付額に相当するほど巨額で、他の先進国との比較でもかなり潤沢です。さらに現状の給付は保険料と税金で賄われており、今後積立金の利用が始まっても、50年程度は債券の利子や株式の配当で賄える計算。 つまり、積立金の取り崩しが始まるのは遠い遠い未来の話なのです。今後100年間の年金給付の中で、計算上では積立金からの拠出は10~15%程度を占めるに過ぎません。少なくとも現時点の想定では、年金給付の財源は盤石といってよいでしょう。 ――これは意外だ。 高橋 実はIMF(国際通貨基金)の年金セミナーで、IMFの高官が日本の年金を高く評価していました。「日本の年金制度はデータの開示と改革を積み上げ、制度の持続可能性を高め世代間分配構造にもメスを入れている。日本の年金制度は世界でもベストなもののひとつだ」と。