若者の「クルマ離れ」に挑むダイハツ・コペンの2つの戦略 初のファン試乗会から
ただし、この横力の発生のタイミングが早すぎ、強過ぎると車線変更はきびきびできても、長い旋回ではクルマの向きが変って行かないリア優勢になってしまう。今回ジャーナリストには試乗枠が設けられなかった。そのため走行性能を具体的に体験することはできなかったので、その加減が最終的にどういうものかは言及できないが、FFをスポーティーに走らせる上でリアサスペンションのグリップレベルがボトルネックになるという原則に則れば理にかなった話だと受け止めた。 D-Frameの採用の理由のひとつにモノコック構造での軽量化の限界がある。軽量化を狙って樹脂の採用範囲を広げようとすれば、外板を強度部材として使うことができなくなる。樹脂は軽量化とコストダウンの両面でメリットがあるから、コペンのコンセプトには極めて相性がいい。加えて少量生産かつフラッグシップとして社内的に大きな期待のかかるコペンならこうした実験的なトライがやり易いこともあるだろう。こうしてモノコック構造を捨て、骨格構造への転換が図られたのである。 テスト・ドライブに参加した旧コペンのオーナーからもその剛性の向上について賛辞があり、どうやらダイハツの言うレベルアップについてはユーザーにもわかるレベルのものであるらしい。
挑戦は「魔法の言葉」
若者のクルマ離れに対して、新型コペンはライトウェイト・スポーツによるストレートな運転の楽しさの提供と、コストを掛け、リスクテイクをしてもユーザーとのコミュニケーションを重視する戦術を立てた。ハードとソフト。その両方のトライアルがユーザーからどう受け止められるかはまだ未知数だ。今後のコミュニケーションがどういう手法になるかについてもまだはっきりとした発表はない。「挑戦というのは魔法の言葉で、現状維持でいいとは誰も言えない。それでは未来がないことは誰もがわかっているから。だから安易に使ってはいけない言葉だが、それでも挑戦するしかない」と藤下氏は言った。願わくばクルマの未来のためにこういう挑戦が継続的に行われ、それが何がしかの成果を上げて欲しいと思う。 (池田直渡/モータージャーナル)