若者の「クルマ離れ」に挑むダイハツ・コペンの2つの戦略 初のファン試乗会から
オープン・スポーツからライトウェイト・スポーツへ
さて、クルマの購入をゴールとしたユーザーとメーカーの関係から、クルマの購入をスタートに切り替えるコミュニケーションの大転換があるとしても、大事なのはクルマそのものの出来であることは原理原則として変わらない。ダメなクルマでいくらコミュニケーションと叫んだところで何も生まれない。そのコペンのエンジニアリングがどういうものであったかについても検証しておきたい。 新旧コペンの狙いには違いがある。藤下氏は新旧両方のコペンの開発に携わったそうなので、その違いを聞いてみると「新型コペンは胸を張ってライトウェイト・スポーツカーだと言えます。旧コペンもスポーツカーであることは同じですが、ベースとなったミラのエンジニアリングの制約もあり、オープンスポーツという意味合いが大きかったと思っています」。 少々文学的なもの言いを補足すれば、ここで言うオープン・スポーツカーという言葉はやはり雰囲気スポーツカーであることを逃れ得ない。つまり純粋な運動性能や動力性能について、万全を期したものではないということだ。ライトウェイト・スポーツは、ハードウェアとして純粋な運動性能と動力性能に焦点を当て、そこに瑕疵が生まれないよう十全な配慮を行ったものだと解釈して大きな間違いはないだろう。
見直されたリア・サスペンションと刷新された骨格フレーム
より具体的な要素に言及すれば、新骨格構造、D-Frameによって、初代コペンに比べ上下曲げ剛性約3倍、ねじれ剛性約1.5倍に強化されたボディと、テールデザインの大幅な変更による空力の改善が、走行性能をオープン・スポーツからライトウェイト・スポーツへと格上げしている。とくに60%低減されたリアの揚力は極めて大きい。そうした詳細は4月13日の記事「新型コペンから見えるもの」を参照していただきたいが、今回藤下氏に直接聞いてわかったこともいくつかあったので、追記したい。 運動性能に関してはリアサスペンションの過渡特性を大きく見直している。前輪に舵角を入れてフロントが回頭すると、車両の後部に遠心力がかかる。それと並行して車両全体に進行方向とのズレが生じることでリアタイヤは横力を発生して踏ん張る。この踏ん張りが無ければ遠心力によってリアは外に飛ばされてしまうのだ。後輪だけが氷に乗っている状況を想定するとわかりやすいだろう。 サスペンションのセッティングの極めて重要なポイントがこのフロントの回頭からリアが踏ん張りだすまでのタイミングと踏ん張る力のバランスにある。新型コペンではこの踏ん張りを強化しているのだと言う。リアの揚力の低減もこれに密接に関係しているのだ。タイヤを地面に押しつけてとにかくリアを踏ん張らせる。とすれば、リアのグリップを信用してフロント荷重を呼びこみながら旋回に入って行く運動性が確保できていることになる。