「相手の心を一瞬でつかむ人」は何が違うのか…言葉のプロが唸った、宇多田ヒカルの“ヒットの哲学”
ヒットを生むコツはあるか。電通のマーケター、佐藤真木さんと阿佐見綾香さんは「ビジネスに主観を持ち出してはいけないという考え方が一般的だが、必ずしもそうではない。“ヒット作品”の根幹には、いつも個人的な感情があった」という――。 【この記事の画像を見る】 ※本稿は、佐藤真木・阿佐見綾香『センスのよい考えには、「型」がある』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。 ■「気づき」はどの瞬間に生まれるのか 「気づき」や「違和感」とはどういうことでしょうか? 最初に言葉の定義をしておきましょう。「気づき」や「違和感」なんて日常的にあるものだから、特に考える必要もないと思う方もいるかもしれませんが、ここをひもとくことで、「気づき」や「違和感」の重要性がわかっていただけると思います。 まず、「気づき」や「違和感」を持つときは、なんらかの「感情」が伴うことが多いと思います。 では、「感情」はどんなときに生まれるのでしょうか? 「感情」が生まれる一つの要因は「予測誤差が大きいとき」だそうです。 人間は絶えず外部からの情報を受け取りつつ、常に少しだけ先を予測しながら生きています。 ■「不快の感情」は危険を察知するセンサーである 例えば、階段を上るときなどを想像してください。 あまり強く意識していないかもしれませんが、人間は次の一歩を予測せずにはうまく階段を上れません。自分自身の予測よりも誤差が大きいとき、例えば急に段差が大きくなるなど、つまずきそうになるような危険な状況であれば「不快の感情」、階段が滑りづらい素材でできていて予測よりも安全な状況であれば「快の感情」が発生します。 このように「感情」は合理的なセンサーであり、「予測誤差」が大きいときに「感情」を発生させることで、人間は予測と違った危機的状況に対してもよりスピーディーに対応できるのです。
■感じる前に「オドロキ」がある 例えば、クルマの衝突実験をしているときは、目の前でクルマが衝突しても、あらかじめ予測しているので誤差が極めて小さく、感情的にはそれほど驚かずに平静でいることができます。 しかし、道を歩いていていきなりクルマが目の前で壁に衝突したときは、予測できていないので、誤差によって大きな感情が発生する、ということです。 『表現の技術』(崎卓馬著 中央公論新社)には次のように書いてあります。 ---------- 感情を動かすために絶対必要な要素、それは「オドロキ」です。すべての人は笑う直前に必ず驚いているのです。~中略~ 笑う前に必ず一度、その変化に対して驚いているのに気がつきます。 ---------- つまり、ここでの「オドロキ」こそが「予測誤差」です。笑ったり悲しんだりという感情が生まれる前には、必ず大きな「予測誤差」があるのです。 ■「日々の習慣」がセンスに差をつける 説明がやや専門的になりましたが、「自分の感情が動かされたとき」とは、自分が予測したことと、実際に起こったことの誤差が大きかったときなのです。 「予測」の多くは、日常的な習慣や常識に則って行なわれています。つまり、「気づく能力」や「違和感」とは、自分の予測=「常識/定説」に対して「何か変だと気づく能力」とも言えるかもしれません。 それが、このステップで必要な「感性力」です。 この「気づく能力」を高めるためには、日頃から「自分の感情が動かされたとき」を、常に忘れないようにメモしたり、SNSにつぶやいたりしておくとよいでしょう。 すると、自分の「気づき」や「違和感」(=誤差)が、どのような「常識」や「定説」(=予測)に対して生まれるものなのか、というストックを持つことができます。